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歯科コラム

子どもにも増えている?若年層の口腔機能低下症に注目

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見過ごさないで!子どもの未来を守るお口の健康

子どもたちの健やかな成長を願うすべての保護者にとって、日々の食事や健康管理は大きな関心事です。しかし、身長や体重といった目に見える成長の陰で、見過ごされがちな重要な問題が現代の子どもたちの間に広がっています。それが「口腔機能低下症」です。

かつては高齢者の問題と考えられていたこの症状が、実は幼い子どもたちの間でも深刻な課題となりつつあるのです。ふとした時に口がぽかんと開いている「ポカン口」、食事に時間がかかりすぎる、言葉が不明瞭で聞き取りにくい、といったサインに心当たりはないでしょうか。これらは単なる癖や個人差として片付けられる問題ではありません。実は、お口の機能が十分に発達していないことを示す危険信号であり、放置すれば歯並びの悪化や全身の健康、さらには学習能力にまで影響を及ぼす可能性があるのです。

この記事では、なぜ今、子どもの口腔機能低下症が注目されているのか、その背景にある離乳食からの食習慣や口呼吸のリスクを深掘りし、子どもの未来を守るために家庭や専門機関で何ができるのかを、専門的な知見に基づき、網羅的かつ具体的に解説していきます。

 


目次

1. 子どもでも起こる口腔機能の問題
2.
ポカン口とそのリスクとは
3. 離乳食の影響と食習慣の関係
4. 口呼吸がもたらす悪影響
5. 成長発達に与える影響
6. 歯並びや噛み合わせの問題
7. 予防のために家庭でできること
8. 学校や園での気づき方
9. 歯科医院での指導内容とは
10. 保護者が知っておくべき対応策


 

1. 子どもでも起こる口腔機能の問題

「口腔機能低下症」という言葉を聞くと、多くの方は加齢に伴う高齢者の問題というイメージを抱くかもしれません。確かに、噛む力や飲み込む力の衰えは、加齢による筋力低下の代表的な症状として広く認識されています。しかし、この問題の対象は決して高齢者だけに限られたものではありません。現代社会において、この口腔機能の発達不全が、若年層、とりわけ成長期にある子どもたちの間で静かに、しかし確実に広がっているという事実が指摘されています。

子どもに見られる口腔機能の問題とは、具体的に「食べる」「話す」「呼吸する」といった、口が本来持つべき基本的な機能が、その年齢に期待されるレベルまで十分に発達していない状態を指します。例えば、食事の場面では、食べ物を上手に噛み砕けずに丸飲みしてしまう、食べるのに非常に時間がかかる、口からよく食べ物をこぼす、特定の硬さや食感のものを嫌がる、といった様子が見られます。また、発話の面では、特定の音がうまく発音できない、いわゆる「滑舌が悪い」状態が年齢を重ねても改善されない、声が小さくこもりがちである、といった特徴が挙げられます。さらに、日常的な様子として、常に口がぽかんと開いている、いびきをかく、といった呼吸に関する問題も、口腔機能の未発達を示す重要なサインです。

これらの問題が子どもたちの間で増加している背景には、現代の生活様式の変化が大きく関わっています。食生活においては、柔らかく調理された食品や加工食品が普及し、子どもたちが意識して「噛む」機会が激減しました。顎や口周りの筋肉は、適切な負荷をかけて使うことによって初めて発達しますが、その機会自体が失われつつあるのです。また、外遊びの減少による体力や筋力の低下も、口周りの筋肉を含む全身の筋力発達に影響を与えていると考えられます。アレルギー性鼻炎などの増加による鼻詰まりが慢性化し、口呼吸が習慣化してしまうケースも少なくありません。このように、社会環境や生活習慣の変化が複合的に絡み合い、本来、自然に獲得されるはずの口腔機能の発達を妨げ、子どもたちの間に口腔機能の問題を引き起こしているのです。この事実に早期に気づき、適切に対処することが、子どもの将来の健康を守る上で極めて重要となります。

 

 

2. ポカン口とそのリスクとは

子どもの口腔機能の問題を考える上で、最も分かりやすく、そして見過ごされやすいサインの一つが「ポカン口」です。これは、正式には「口唇閉鎖不全(こうしんへいさふぜん)」と呼ばれる状態で、リラックスしている時に無意識に口が開き、上下の唇が閉じずにいる状態を指します。テレビを見ている時、何かに集中している時、あるいはぼーっとしている時に、お子さんの口が常に少し開いてはいないでしょうか。この「ポカン口」は、単にだらしなく見えるといった見た目の問題にとどまらず、口腔内、ひいては全身の健康に対する様々なリスクを内包する危険なサインなのです。

その最大のリスクは、口腔内の乾燥です。私たちの唾液は、単に食べ物の消化を助けるだけでなく、口の中を潤し、細菌の増殖を抑える自浄作用や、酸を中和して歯の再石灰化を促す緩衝作用など、口腔環境を健康に保つための重要な役割を担っています。しかし、ポカン口によって口呼吸が常態化すると、口の中は絶えず空気に晒され、唾液が蒸発して乾燥した状態、いわゆるドライマウスに陥ります。これにより唾液の持つ防御機能が著しく低下し、虫歯菌や歯周病菌が繁殖しやすい環境が作られてしまうのです。その結果、丁寧に歯磨きをしていても虫歯になりやすくなったり、子どもでは稀と考えられがちな歯肉炎のリスクが高まったりします。また、口腔内の細菌が増殖することで、口臭の原因にもなり得ます。

さらに、ポカン口は口の周りの筋肉、特に唇を閉じる役割を持つ「口輪筋(こうりんきん)」の筋力が低下していることの現れです。口輪筋は、顔の表情を作る表情筋の一つであり、この筋肉が弱いと、唇をしっかりと閉じるという基本的な動作が困難になります。筋力の低下は、食べ物を口からこぼしやすくなる、麺類をすする力が弱いといった食事面での問題に直結します。加えて、口輪筋の働きは、歯並びを外側から支える重要な役割も担っています。内側からは舌が、外側からは唇や頬の筋肉が歯を支えることで、歯並びは正しい位置に保たれます。しかし、ポカン口で口輪筋の圧力がかからない状態が続くと、この内外の筋肉のバランスが崩れ、前歯が突出しやすくなる、いわゆる「出っ歯」の状態を助長する一因ともなり得るのです。このように、ポカン口は単なる癖ではなく、口腔機能の低下を示す明確な指標であり、様々な健康リスクの引き金となることを理解しておく必要があります。

 

 

3. 離乳食の影響と食習慣の関係

子どもの口腔機能の発達は、生まれてすぐの哺乳行動から始まり、生涯にわたる健康の礎を築く重要なプロセスです。その中でも、特に決定的な影響を与えるのが、乳児期の「離乳食」の進め方と、その後に形成される食習慣です。食べるという行為は、単に栄養を摂取するだけでなく、「吸う」から「噛み砕き、飲み込む」へと、口の機能を高度化させていくための絶好のトレーニング期間に他なりません。この時期の経験が、その後の顎の成長や咀嚼能力、さらには正しい嚥下(えんげ)機能の獲得に深く関わってきます。

離乳食は、赤ちゃんの月齢や発達段階に合わせて、食材の形態を液体状から徐々に固形に近づけていくのが基本です。このプロセスは、赤ちゃんが舌や唇、顎を巧みに使い、食べ物を口の中で適切に処理する能力を段階的に学んでいくために非常に重要です。例えば、離乳食初期の「ごっくん期」では、唇を閉じて食べ物を取り込み、舌で喉の奥へ送るという基本的な動きを習得します。中期から後期にかけて、舌で食べ物を歯茎の上に乗せて「もぐもぐ」と潰す動きを覚え、やがて前歯が生えそろう頃には「かみかみ」と歯を使って噛むことを学習します。この一連の流れを適切に経験することが、口周りの筋肉を発達させ、効率的な咀嚼と嚥下のパターンを身につける上で不可欠なのです。

しかし、現代の育児環境においては、この重要なプロセスが十分に機能しないケースが増えています。例えば、共働き家庭の増加などを背景に、調理の手間を省けるベビーフードの利用が一般的になりました。市販のベビーフードは安全性や栄養バランスに優れていますが、一方で、家庭で作る離乳食に比べて全体的に柔らかく、均一な食感のものが多い傾向にあります。また、保護者が良かれと思って食材を細かく刻みすぎたり、柔らかく煮込みすぎたりすることで、子どもが「噛む」必要性を感じないまま食事を終えてしまうことも少なくありません。

こうした環境が続くと、食べ物をほとんど噛まずに飲み込む「丸飲み」の癖がついてしまう危険性があります。丸飲みの習慣は、咀嚼による顎の発達を妨げるだけでなく、唾液の分泌を減少させ、消化不良や栄養吸収の非効率化につながる可能性も指摘されています。さらに、幼児期以降も、ハンバーグやパスタ、パンといった柔らかい主食が中心の食生活が続くと、噛む力が十分に育たないまま成長してしまいます。子どもの口腔機能を健全に育むためには、離乳食の段階から「噛む」ことの重要性を意識し、多様な食感の食材をバランスよく取り入れ、生涯にわたる良好な食習慣の基礎を築いてあげることが求められるのです。

 


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4. 口呼吸がもたらす悪影響

人間の呼吸器は、本来、鼻で呼吸するように設計されています。鼻腔は、吸い込んだ空気を加温・加湿し、内側の粘膜と線毛がフィルターとなってウイルスや細菌、ホコリなどの異物を除去する、極めて高機能な空気清浄機のような役割を果たしています。この「鼻呼吸」こそが、私たちの体を感染症から守り、質の高い酸素を肺に送り届けるための生理的に正しい呼吸法です。しかし、前述の「ポカン口」と密接に関連して常態化するのが「口呼吸」であり、この習慣が子どもたちの心身にもたらす悪影響は、決して軽視できるものではありません。

口呼吸では、鼻呼吸が持つフィルター機能や加温・加湿機能が一切働きません。冷たく乾燥し、汚染物質を含んだ空気が直接、喉や気管に流れ込むことになります。その結果、喉の粘膜は乾燥して傷つきやすくなり、ウイルスや細菌が付着・増殖しやすくなるため、風邪やインフルエンザ、扁桃炎といった感染症に罹患するリスクが著しく高まります。アレルギー性鼻炎や花粉症を持つ子どもは、鼻詰まりのために口呼吸になりがちですが、その口呼吸がさらに喉の炎症を悪化させ、免疫機能を低下させるという悪循環に陥ってしまうのです。

さらに、口呼吸の影響は呼吸器系にとどまりません。睡眠の質にも深刻な影響を及ぼすことが知られています。口呼吸をしていると、睡眠中に舌が喉の奥に落ち込みやすくなり(舌根沈下)、気道を狭めてしまいます。これが「いびき」の原因であり、重度になると、一時的に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」を引き起こす可能性もあります。睡眠中の呼吸が不安定になると、体内に十分な酸素が供給されず、脳や体が十分に休息できません。その結果、日中に強い眠気に襲われたり、集中力が散漫になったり、落ち着きがなくなったり、時には学習意欲の低下につながることもあります。保護者から見れば「うちの子はよく寝ている」と思っていても、実は質の低い睡眠によって、日中のパフォーマンスが大きく損なわれているケースは少なくないのです。

加えて、口呼吸は顔貌の発達にも影響を与えます。鼻呼吸が正しく行われていると、舌は上顎にぴったりと収まり、その圧力が上顎の成長を内側から促します。しかし、口呼吸では舌の位置が下がり(低位舌)、この正常な成長メカニズムが働きません。その結果、上顎の成長が不十分となり、鼻腔が狭くなる、頬骨が平坦になる、下顎が後退して二重顎のようになるなど、「アデノイド様顔貌」と呼ばれる特徴的な顔つきになることがあります。このように、口呼吸は単なる呼吸の癖ではなく、免疫力の低下、学習能力への影響、そして顔の骨格形成に至るまで、子どもの健やかな成長を多方面から阻害する重大なリスク要因なのです。

 

5. 成長発達に与える影響

口腔機能の低下は、口の中という局所的な問題にとどまらず、子どもの全身の成長発達に広範かつ深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に、脳や身体が著しい成長を遂げる幼児期から学童期にかけて、口の機能が十分に発達していないことは、子どもの将来のポテンシャルを最大限に引き出す上での大きな足かせとなり得ます。その影響は、身体的な発達から、知的・精神的な発達にまで及ぶことを理解しておく必要があります。

まず、身体的な発達への影響として、最も直接的なのが「姿勢」との関連です。正しい姿勢を維持するためには、頭の重さを支える首や肩の筋肉だけでなく、体幹全体の筋力バランスが重要です。実は、口を閉じて鼻で呼吸し、舌を正しい位置(上顎のスポットと呼ばれる位置)に保つことは、首周りの筋肉を安定させ、ひいては全身の筋力バランスを整える上で重要な役割を果たしています。

しかし、ポカン口や口呼吸、低位舌といった口腔機能の問題があると、頭部が前方に突き出るような姿勢(ヘッドフォワードポスチャー)になりがちです。この不自然な頭の位置を支えるために、首や肩、背中の筋肉に過剰な負担がかかり、猫背や側弯症などを誘発する一因となります。また、咀嚼機能の低下は、顎の発育不全に直結します。よく噛むという行為は、顎の骨に適切な刺激を与え、その成長を促すために不可欠です。この刺激が不足すると、顎が本来の大きさにまで成長せず、顔全体の骨格バランスの歪みにもつながりかねません。

次に、知的・精神的な発達への影響も看過できません。前述の通り、口呼吸は睡眠の質を低下させ、日中の脳の働きを鈍らせる原因となります。慢性的な酸素不足と質の悪い睡眠は、集中力や記憶力の低下を招き、学業成績に直接影響する可能性があります。授業中にぼんやりしてしまう、落ち着きがないといった様子が、実は夜間の口呼吸に起因しているケースも考えられるのです。

さらに、滑舌が悪く、自分の話す言葉が相手に伝わりにくいという経験は、子どもにとって大きなストレスとなり得ます。コミュニケーションに対する消極性を生み、自己肯定感の低下につながることも懸念されます。友達の輪の中に入っていくことを躊躇したり、発表の場面で萎縮してしまったりするなど、社会性の発達にも影を落とすことがあるのです。このように、食べる、話す、呼吸するといった生命維持と社会生活の根幹をなす口腔機能の問題は、子どもの身体と心の両面の健やかな成長を阻害する、非常に重要な課題であると言えます。

 

 

6. 歯並びや噛み合わせの問題

子どもの口腔機能低下症がもたらす影響の中で、保護者が最も視覚的に認識しやすく、関心を寄せるのが「歯並び」や「噛み合わせ」の問題、すなわち不正咬合でしょう。美しい歯並びは、見た目の問題だけでなく、生涯にわたる口腔の健康、ひいては全身の健康を維持するための重要な基盤です。そして、その歯並びが形成される過程において、舌や唇、頬といった口周りの筋肉の働きが決定的に重要な役割を果たしているのです。

私たちの歯列は、例えるなら内側と外側からの力の均衡が保たれた、絶妙なバランスの上に成り立っています。内側からは「舌」が、そして外側からは「唇」と「頬」の筋肉が、常に歯に対して圧力をかけています。この内外からの力のバランスが取れている状態であれば、歯はアーチ状の正しい位置に並びます。しかし、口腔機能が低下している子どもでは、この均衡が大きく崩れてしまいます。

その最大の要因が、「舌の正しい位置」の喪失です。正常な状態では、リラックスしている時や食べ物を飲み込む時、舌の先は上顎の前歯の少し後ろにある「スポット」と呼ばれる位置に触れ、舌全体が上顎にぴったりと吸い付くように収まっています。この舌が上顎を押す圧力が、上顎の骨を側方へ正常に成長させるための重要な原動力となります。しかし、口呼吸や指しゃぶりなどの癖があると、舌は本来あるべき位置から下がり、下の前歯の裏側あたりにだらりと位置する「低位舌(ていいぜつ)」という状態になります。低位舌では、上顎を内側から広げる力がかからないため、上顎のアーチが狭く、V字型に近い形(狭窄歯列弓)になってしまいます。顎が狭くなれば、当然、永久歯がすべてきれいに並ぶためのスペースが不足し、歯が重なり合って生える「叢生(そうせい)」、いわゆる乱ぐい歯の原因となるのです。

さらに、ポカン口に代表される口輪筋の筋力低下も、歯並びに悪影響を及ぼします。唇を閉じる力が弱いため、外側から歯を押さえる力が不足します。この状態で低位舌によって下の前歯が内側から押されると、上下の唇の間に歯が押し出される形となり、前歯が前方に傾斜する「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」、いわゆる出っ歯や、上下の歯が閉じない「開咬(かいこう)」を引き起こすリスクが高まります。

これらの不正咬合は、見た目の問題だけでなく、食べ物を効率よく噛み砕けない、特定の音が発音しにくい、顎関節症の原因となるなど、機能的な問題にも直結します。将来的に矯正治療が必要になる可能性も高まりますが、そもそもその原因が口腔機能の不均衡にあるため、単に歯を並べるだけでなく、筋肉の働きを改善するトレーニングを併用しなければ、後戻りしやすいとも言われています。子どものうちから口腔機能に注目することは、将来の歯並びを守るための最も効果的な「予防矯正」と言えるでしょう。

 


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7. 予防のために家庭でできること

子どもの口腔機能低下症は、その多くが日々の生活習慣の中に原因が潜んでいます。裏を返せば、専門的な治療が必要になる前に、家庭での少しの意識と工夫によって、そのリスクを大幅に減らし、予防・改善へと導くことが可能であるということです。子どもの健やかな口腔機能の発達を促すために、日々の暮らしの中で取り入れられる具体的なアプローチを紹介します。

食事での工夫

口腔機能、特に咀嚼能力を育む上で最も重要なのが、日々の食事です。現代の食生活は柔らかいものが中心になりがちですが、意識的に「噛む」ことを促す食材を食卓に取り入れることが大切です。例えば、ごぼうやレンコンといった根菜類、きのこ類、こんにゃく、切り干し大根などをメニューに加えてみましょう。食材を少し大きめに切ったり、加熱時間を短くして歯ごたえを残したりするのも有効な工夫です。

また、ひき肉を塊の肉に変える、白米に雑穀や玄米を混ぜる、おやつにはスナック菓子だけでなく、おしゃぶり昆布や小魚、ナッツ類などを選ぶといった小さな変更も、噛む回数を増やす良い機会となります。食事中はテレビを消し、親子で会話を楽しみながら、一口入れたら30回噛むことを目標にするなど、ゆっくりとよく噛んで食べる習慣そのものを身につけさせることが重要です。その際、「しっかりカミカミしようね」といった具体的な声かけが、子どもの意識を高める助けになります。

口周りの筋肉を鍛える遊び

口の周りの筋肉、特に唇を閉じる口輪筋や舌の筋肉は、遊びを通して楽しみながら鍛えることができます。シャボン玉遊びは、息をコントロールしながら唇をすぼめる良いトレーニングになります。風船を膨らませる、吹き戻し(ピロピロ笛)を吹く、ストローでブクブクと泡を立てる遊びなども、口周りの筋肉を効果的に使います。

また、親子で「にらめっこ」をして、顔の筋肉を大きく動かすのも良いでしょう。さらに、専門的なトレーニングとして広く知られているのが「あいうべ体操」です。これは、「あー」と口を大きく開け、「いー」と口を横に広げ、「うー」と唇を強く前に突き出し、「べー」と舌を顎の先につけるように思い切り出す、という一連の動きを繰り返すものです。これを食後に数回行うだけでも、舌や口輪筋の筋力アップに繋がり、鼻呼吸を促進する効果が期待できます。

正しい姿勢の意識づけ

食事中や勉強中、テレビを見ている時の姿勢にも注意を払いましょう。足が床にしっかりとつき、背筋を伸ばした姿勢は、自然と口を閉じやすくし、鼻呼吸を促します。椅子が高すぎて足がぶらぶらしている状態では、体が不安定になり、口が開きやすくなります。足元に台を置くなどして、安定した姿勢を保てるように環境を整えてあげることが大切です。

これらの家庭での取り組みは、特別なことではなく、日々の生活の中の小さな習慣の積み重ねです。根気強く続けることが、子どもの口腔機能という一生の財産を育むことに繋がります。

 

 

8. 学校や園での気づき方

子どもの口腔機能の問題は、家庭内だけで観察されるとは限りません。むしろ、子どもが一日の多くの時間を過ごす保育園や幼稚園、学校といった集団生活の場は、家庭とは異なる視点から子どもの様子を客観的に捉えることができる、非常に重要な観察の機会となります。保護者自身が我が子の癖に慣れてしまって見過ごしているサインも、保育士や教員といった専門家の目から見れば、発達上の懸念事項として浮かび上がることがあります。家庭と教育・保育現場が連携し、共通の認識を持って子どもを見守ることが、問題の早期発見と適切な対応への第一歩となります。

集団生活の中で、保育士や教員が子どもの口腔機能の低下を疑うきっかけとなるサインは数多く存在します。最も分かりやすいのが給食やお弁当の時間です。一人だけ食べるのに極端に時間がかかる、口の中に食べ物を溜め込んだままなかなか飲み込まない、硬いものを嫌がって残す、スープなどの汁物ばかりを好む、口から食べ物をよくこぼす、といった様子は、咀嚼や嚥下の機能に何らかの問題がある可能性を示唆します。

また、食事中以外でも、授業中や活動中に常に口がぽかんと開いている子どもは、口呼吸が習慣化していると考えられます。発音や発話の面では、特定の音が不明瞭で聞き取りにくかったり、年齢が上がっても幼い話し方が抜けなかったりする場合、舌の動きが不十分である可能性が疑われます。さらに、体育の授業で疲れやすい、活動中に集中力が続かないといった様子も、質の悪い睡眠を伴う口呼吸が背景にあるかもしれません。

これらのサインに気づいた際、園や学校の役割は非常に重要です。まずは、子どもの様子を注意深く、継続的に観察し、その状況を客観的な事実として記録します。そして、保護者面談や連絡帳などを通じて、家庭での様子と園・学校での様子に違いがないか、情報共有を図ることが不可欠です。「園(学校)では、食事の際に少し時間がかかることがあるのですが、ご家庭ではいかがですか?」といった形で、決して保護者を責めるような口調ではなく、子どもの成長を共にサポートするという姿勢で丁寧に情報を伝えることが求められます。

こうした連携を通じて、保護者が家庭では気づかなかった問題意識を持つきっかけとなり、専門家への相談へと繋がるケースも少なくありません。また、園や学校全体として食育活動に力を入れ、よく噛むことの大切さを伝えたり、食事前の「あいうべ体操」などを日課として取り入れたりすることも、すべての子どもたちの口腔機能の発達を促す上で非常に有効な取り組みと言えるでしょう。

 

9. 歯科医院での指導内容とは

家庭での工夫や園・学校での気づきによって子どもの口腔機能に懸念が生じた場合、次のステップとして考えられるのが、歯科医院をはじめとする専門家への相談です。近年、虫歯や歯周病の治療だけでなく、口腔機能の発達をサポートし、問題を未然に防ぐ「予防」や「育成」に力を入れる歯科医院が増えています。歯科医院では、専門的な知識と機器を用いて、子どもの口の状態を正確に評価し、一人ひとりの状況に合わせた具体的な指導やトレーニングを行ってくれます。

まず、歯科医院を受診すると、詳細な問診が行われます。保護者から、食事の様子、睡眠中のいびきの有無、日中の口の開閉、発音で気になることなど、日常生活における子どもの様子を詳しく聞き取ります。その後、歯科医師や歯科衛生士が、実際に口の中を診察します。歯並びや噛み合わせの状態、舌や唇の形や大きさ、舌小帯(舌の裏側にあるスジ)の長さに異常がないかなどを視覚的に確認します。さらに、必要に応じて、リップテスターと呼ばれる器具で口唇閉鎖力を測定したり、咀嚼能力や嚥下機能を評価するための簡単な検査を行ったりすることもあります。これらの診察と検査を通じて、口腔機能がどの程度低下しているのか、その原因はどこにあるのかを総合的に診断します。

診断に基づき、具体的な指導やトレーニングが開始されます。その中心となるのが「MFT(Myofunctional Therapy:口腔筋機能療法)」です。MFTは、いわば「お口の筋トレ」であり、舌や唇、頬の筋肉を正しく使えるように再教育するためのプログラムです。専門の訓練を受けた歯科衛生士などの指導のもと、舌を正しい位置(スポット)に置く練習、正しい飲み込み方(嚥下)のトレーニング、唇や頬の筋肉を鍛えるエクササイズなどを、段階的に行っていきます。例えば、舌で上顎を押し上げる運動や、ストローやボタンを使ったユニークなトレーニングなど、子どもが飽きずに続けられるような工夫が凝らされています。これらのトレーニングを家庭でも継続して行うことで、筋肉のバランスを整え、鼻呼吸や正しい嚥下を習慣化させていきます。

また、歯並びに問題が及んでいる場合には、MFTと並行して、マウスピース型の矯正装置(筋機能矯正装置)を使用することもあります。この装置は、単に歯を動かすだけでなく、装着することで舌を正しい位置に誘導し、口呼吸から鼻呼吸への移行を助けるなど、口腔機能そのものの改善を目的としています。さらに、アレルギー性鼻炎などによる鼻詰まりが口呼吸の主な原因であると判断された場合には、耳鼻咽喉科への受診を勧められることもあります。このように、歯科医院では多角的な視点から問題の原因を探り、根本的な改善を目指した専門的なアプローチが提供されるのです。

 


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10. 保護者が知っておくべき対応策

お子さんの口腔機能低下症という課題に直面した時、保護者としては不安や戸惑いを感じるかもしれません。しかし、最も重要なのは、問題を正しく理解し、冷静に、そして根気強く対応していくことです。

いたずらに焦ったり、子どもを叱ったりするのではなく、子どもの健やかな成長をサポートするための好機と捉え、具体的な一歩を踏み出すことが求められます。ここでは、保護者が知っておくべき対応策を、具体的な行動指針として整理します。

まずは子どもの様子を注意深く観察することから

全ての対応は、現状把握から始まります。先入観を持たずに、改めてお子さんの日常の様子を観察してみましょう。食事の際に、一口の量や噛んでいる回数、食べる速さはどうでしょうか。食べ物を口からこぼしたり、飲み込みにくそうにしたりしていませんか。テレビを見ている時や眠っている時、口はしっかりと閉じられていますか。いびきや歯ぎしりの音は聞こえないでしょうか。普段の会話で、発音が不明瞭な言葉はないでしょうか。

これらのチェックポイントを意識して数日間観察するだけでも、これまで気づかなかった我が子の癖や課題が見えてくるはずです。客観的な事実を把握することが、専門家に相談する際にも役立ちます。

焦らず、叱らず、根気強くサポートする

口腔機能の改善は、身長が伸びるのと同じように、一朝一夕で結果が出るものではありません。特に、長年しみついた癖を修正し、筋肉を再教育するには、数ヶ月から時には年単位の時間が必要です。家庭でのトレーニングや食事の工夫を始めても、すぐに変化が見られないからといって落胆する必要はありません。

「どうして口を開けているの!」「ちゃんとしなさい!」などと感情的に叱ることは、子どもにプレッシャーを与え、逆効果になりかねません。むしろ、「シャボン玉、上手になったね」「よく噛んで食べられて偉いね」といったように、できたことを具体的に褒め、子どものモチベーションを維持することが大切です。親子で楽しみながら取り組むという姿勢が、継続の鍵となります。

専門家への相談をためらわない

家庭での観察や対応で少しでも不安や疑問を感じたら、決して一人で抱え込まず、専門家の力を借りることを躊躇しないでください。かかりつけの歯科医院は、最も身近で頼りになる相談相手です。口腔機能の問題に詳しい歯科医師であれば、適切な診断とアドバイス、必要に応じたトレーニングの指導をしてくれます。

また、鼻詰まりが慢性化している場合は耳鼻咽喉科、言葉の発達に懸念がある場合は小児科や言語聴覚士など、症状に応じて適切な専門機関を受診することも重要です。早期に専門家と連携することで、問題が複雑化する前に、より効果的で適切な対応をとることが可能になります。子どもの未来の健康のために、勇気を持って専門家の扉を叩くことが、保護者にできる最善の対応策の一つなのです。

 

 

健やかな未来へつなぐ、お口育ての第一歩

現代の子どもたちが直面する「口腔機能低下症」という課題は、単に口の中だけの問題ではなく、全身の健康、学習能力、そして生涯にわたる生活の質(QOL)にまで深く関わる、非常に重要なテーマです。ポカン口や口呼吸、丸飲みの習慣といった一見些細に見えるサインの背後には、食生活の変化や生活様式の変容といった、現代社会が抱える構造的な問題が潜んでいます。

この記事を通して、その原因から多岐にわたるリスク、そして具体的な対策に至るまでを詳しく解説してきました。大切なのは、これらのサインに気づいた時に、それを問題行動として捉えるのではなく、子どもの健やかな成長をより良くサポートするための「気づきのチャンス」と前向きに捉えることです。家庭での食事の工夫や、遊びを通じたトレーニングといった日々の小さな積み重ねは、子どもの口腔機能を育む「お口育て」の基本となります。

そして、不安や疑問を感じた時には、決して一人で悩まず、歯科医院をはじめとする専門家へ相談する勇気を持つことが、問題解決への確実な道筋を示してくれます。子どもの口腔機能を健全に育むことは、美しい歯並びや健やかな身体だけでなく、自信を持って笑い、話し、食べることができるという、豊かで幸せな未来への最高の贈り物となるはずです。

 


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