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院長:内藤 洋平

〒458-0925
名古屋市緑区桶狭間1910
TEL:052-627-0921

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歯科コラム

歯を残す選択肢「保存治療」で変わる未来

「抜歯宣告」は終わりのはじまりではない。自分の歯で生きるための保存治療入門

かつて、重度の虫歯や歯周病に冒された歯を前にしたとき、私たちに与えられる選択肢は非常に限られていました。多くの場合、それは「抜歯」という、ある種の最終宣告でした。しかし、歯科医療が目覚ましい進化を遂げた現代において、その常識は大きく覆されつつあります。

今、注目されているのは「歯をいかにして残すか」という、未来を見据えた選択肢、すなわち「保存治療」です。これは単一の術式を指す言葉ではなく、危機に瀕した歯をあらゆる知識と技術を駆使して救い、口腔内での機能と存在を維持しようとする歯科医療の包括的な理念そのものです。自分の歯で噛みしめる感覚、自然な笑顔、そして全身の健康への貢献。天然歯が持つ価値が再認識される中、保存治療は、私たちのクオリティ・オブ・ライフを根本から支える重要な鍵となっています。

この記事では、抜歯という決断を下す前に知っておくべき「保存治療」の全貌を、その基本から最新の考え方、そして患者自身が後悔しないための判断基準まで、深く掘り下げて解説していきます。

 


目次

 1. 保存治療とはどういう治療か
 2. なぜ歯を抜かない選択が注目されているのか
 3. 歯を残すことのメリットとリスク
 4. 神経を取らずに済む治療法とは
 5.  重度の虫歯でも保存は可能?
 6. 歯周病でも保存治療はできる?
 7. 保存治療が受けられる歯科医院の選び方
 8. 保険が適用される治療とされない治療
 9. インプラントと保存治療の違い
 10. 患者として後悔しない判断のポイント


 

1. 保存治療とはどういう治療か

保存治療とは、その名の通り、虫歯や歯周病、外傷などによって損傷を受けた歯を、抜歯することなく機能的に回復させ、口腔内に保存するための一連の治療の総称です。これは、特定の治療法を指す限定的な言葉ではなく、歯科医療における「歯を守り抜く」という思想に基づいた、包括的なアプローチを意味します。

その範囲は非常に広く、まず多くの人が経験するであろう、虫歯を削って修復材を詰める「う蝕治療(充填)」も、歯の崩壊を防ぎ保存するための基本的な治療です。虫歯が進行し、歯の神経である歯髄にまで感染が及んだ場合に行われる「歯内療法(根管治療)」は、保存治療の中核をなす専門分野です。歯の内部から感染源を徹底的に取り除き、再び機能できる土台を再構築するこの治療なくして、重度の虫歯の保存はあり得ません。

さらに、歯を支える土台である歯周組織(歯ぐきや骨)の疾患、すなわち歯周病に対する治療も、広義の保存治療に含まれます。歯石除去やルートプレーニングといった基本的な治療から、失われた骨を再生させる歯周組織再生療法に至るまで、これらはすべて歯が抜け落ちるのを防ぎ、その場に留めるための重要なアプローチです。

また、歯が大きく割れてしまったり、虫歯が歯ぐきの下深くまで進行してしまったりした場合でも、外科的な処置(歯冠長延長術など)を併用して、被せ物が可能な状態にすることで歯を救う試みも行われます。このように、保存治療は一つの技術で完結するものではなく、う蝕治療学、歯内療法学、歯周病学といった複数の専門分野の知識と技術を統合し、一本の歯を救うという共通の目標に向かって進められる、歯科医療の根幹をなす治療体系なのです。

 

 

2. なぜ歯を抜かない選択が注目されているのか

近年、歯科医療の現場において「安易に歯を抜かない」という選択が、歯科医師と患者双方にとっての共通認識として急速に広まっています。この背景には、いくつかの重要な要因が複合的に絡み合っています。

第一に、医療技術の飛躍的な進歩が挙げられます。マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)や歯科用CTといった診断・治療機器の登場により、かつては「勘」や「経験」に頼らざるを得なかった歯の内部の微細な構造や病変の状態を、正確に視覚化できるようになりました。これにより、根管治療の成功率は劇的に向上し、従来であれば抜歯と診断されていたような難症例でも、高い精度で歯を保存することが可能になったのです。

第二に、天然歯の持つ本来の価値が科学的に再認識されてきた点です。自分の歯には、歯と顎の骨をつなぐ「歯根膜」という薄いクッションのような組織が存在します。この歯根膜には、噛んだ時の硬さや感触を脳に伝えるセンサー(圧受容体)としての重要な役割があります。この機能により、私たちは食べ物の食感を楽しみ、また、硬すぎるものを噛んだ際に無意識に力を加減して歯や顎を守ることができます。歯を失い、インプラントなどの人工物に置き換えると、この繊細な感覚は永久に失われてしまいます。この「噛む」という行為の質を維持することの重要性が、専門家の間で広く認識されるようになりました。

第三に、患者自身の健康意識の高まりです。インターネットの普及により、人々は自らの医療情報を主体的に収集できるようになりました。その結果、抜歯がもたらす長期的なデメリット(隣の歯が傾く、噛み合わせのバランスが崩れる、顎の骨が痩せるなど)や、インプラントやブリッジといった補綴治療の限界についても理解が深まり、「できる限り自分の歯を残したい」と考える人が増加しました。

これらの要因が組み合わさり、歯科医療は単に欠損を補う「修復」から、今あるものを守り育てる「保存と予防」へと、その中心的な価値観をシフトさせています。歯を抜かない選択は、単なる温情的な措置ではなく、科学的根拠に基づいた、患者の未来のQOL(生活の質)を最大化するための合理的な選択として注目されているのです。

 

 

3. 歯を残すことのメリットとリスク

歯を抜かずに保存するという選択は、多くの恩恵をもたらしますが、同時に潜在的なリスクも内包しています。治療を受けるにあたり、その両面を冷静に理解し、納得した上で決断することが極めて重要です。

歯を残すことのメリット

最大のメリットは、前述した「歯根膜」の機能を温存できることです。これにより、食事の際の繊細な食感や歯ごたえを感じることができ、食生活の豊かさが維持されます。また、噛む力を適切にコントロールできるため、顎関節への負担を軽減し、口腔全体の調和を保つ上でも有利です。

審美的な観点からも、天然歯に勝るものはありません。歯ぐきとの境目の自然な移行や、光の透過性など、ご自身の歯が持つ美しさを維持できます。

機能的な面では、抜歯後に起こりうる様々な問題を防げる点が挙げられます。歯を一本失うと、隣り合った歯が倒れ込んできたり、噛み合っていた対向の歯が伸びてきたりして、全体の噛み合わせのバランスが崩れる原因となります。これを防ぐためにブリッジやインプラントが必要になりますが、保存治療が成功すれば、こうした連鎖的な問題の発生を未然に防ぐことができます。

経済的な観点からも、長期的にはメリットが大きい場合があります。質の高い保存治療は初期費用がかかることもありますが、もし抜歯してインプラント治療を選択すれば、それ以上の費用が必要となることが一般的です。

歯を残すことのリスク

一方で、リスクも存在します。保存治療を施した歯は、健康な歯に比べて構造的に弱くなっていることが多く、特に神経を抜いた歯は将来的に破折するリスクが高まります。

また、根管治療などを行った場合でも、完全に無菌化することは難しく、体調の変化などによって細菌が再活性化し、再治療が必要になる可能性はゼロではありません。治療の成功率は100%ではなく、時間と費用をかけたにもかかわらず、最終的に抜歯に至るケースも存在します。

さらに、治療後の歯を長持ちさせるためには、患者自身による質の高いセルフケアと、定期的なプロフェッショナルメンテナンスが不可欠となります。この維持管理を怠ると、二次的な虫歯や歯周病を招き、歯の寿命を縮めてしまうことになります。これらのメリットとリスクを天秤にかけ、歯科医師と十分に話し合った上で、最適な道を選択することが求められます。

 


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4. 神経を取らずに済む治療法とは

「虫歯が深い=神経を抜く」というのは、必ずしも全てのケースに当てはまるわけではありません。歯髄(神経)は、歯に栄養を供給し、温度や痛みを感じるセンサーとしての役割を担う重要な組織です。可能な限り歯髄を温存することは、歯の寿命を延ばす上で非常に有益です。現代の歯科医療には、神経を抜かずに済ませるための高度な治療法が存在します。

これらの治療法は「生活歯髄療法」と総称され、歯髄がまだ生きている(生活している)状態であることが前提となります。主な方法として「覆髄法(ふくずいほう)」があります。

間接覆髄法

これは、虫歯が非常に深いが、まだ歯髄までは達していないと診断される場合に行われます。虫歯に感染した象牙質を慎重に除去していくと、歯髄を覆う象牙質が非常に薄い層で一枚残ることがあります。この薄い象牙質を介して歯髄が刺激を受けないよう、また歯髄自身が持つ防御機能(第三象牙質の形成)を促すために、特殊な薬剤を塗布し、その上から修復物を詰める方法です。これにより、歯髄への直接的なダメージを避け、その活力を保ちます。

直接覆髄法

虫歯の除去中や外傷などによって、偶発的に歯髄がごく小さく露出してしまった場合に行われる治療です。従来、歯髄が露出した場合は神経を抜くのが一般的でしたが、近年、MTAセメントなどの優れた生体親和性を持つ材料が登場したことで、状況は大きく変わりました。MTAセメントは、露出した歯髄を直接覆うことで、高い封鎖性と殺菌性を発揮し、歯髄の炎症を鎮め、硬組織(デンティンブリッジ)の形成を促します。これにより、細菌の侵入路を断ち切り、歯髄を健康な状態に保ったまま保存できる可能性が飛躍的に高まりました。

これらの治療が成功するかどうかは、歯髄の炎症が可逆的(元に戻れる)な範囲に留まっているか、治療中の細菌コントロールが徹底されているか、そして治療後の修復物による封鎖が確実か、といった複数の要因に左右されます。精密な診断と高度な技術が要求される治療法ですが、歯の将来を大きく変える可能性を秘めた、価値ある選択肢と言えます。

 

5. 重度の虫歯でも保存は可能?

歯の大部分が虫歯によって崩壊し、一見すると抜歯しか道がないように思えるケースでも、現代の保存治療の技術を駆使すれば、歯を残せる可能性は十分にあります。その成否を分ける最も重要なポイントは、「フェルール」と呼ばれる、被せ物(クラウン)を装着するために必要な健康な歯質が、歯ぐきの上にどれだけ残っているかです。

根管治療による土台の確保

まず、虫歯が神経にまで達している場合は、徹底した根管治療が不可欠です。マイクロスコープなどを用いて、感染した歯髄組織を完全に取り除き、根管内を無菌化することで、歯の根という「基礎」部分を健全な状態に戻します。この基礎工事が不完全では、どんなに立派な建物を建てても意味がありません。

支台築造(コア)による補強

根管治療後、残っている歯質が少ない場合は、そのままではクラウンを支えることができません。そのため、「支台築造(したいちくぞう)」という処置を行います。これは、根管内にポスト(土台の芯)を立て、その周りをレジンや金属で補強し、クラウンを被せるための頑丈な土台(コア)を作り上げる処置です。これにより、失われた歯冠部分の構造を人工的に回復させます。

歯冠長延長術(クラウンレングスニング)

問題は、虫歯が歯ぐきの下深くまで進行し、フェルールとして利用できる歯質が全くない場合です。このような状況で用いられるのが、「歯冠長延長術」という外科的な処置です。これは、歯の周りの歯ぐきや骨を部分的に切除・整形することで、歯ぐきの下に埋もれていた健康な歯質を意図的に露出させる手術です。これにより、クラウンを確実に把持させるためのフェルールを人為的に確保し、通常では不可能だった歯の保存を実現します。

これらの治療法は、それぞれ高度な専門知識と技術を要し、複数のステップを踏むため治療期間も長くなります。しかし、根管治療、支台築造、そして必要に応じて歯冠長延長術といった処置を適切に組み合わせることで、絶望的に見えた重度の虫歯でも、機能的かつ審美的に回復させ、再び噛むことができるようになる可能性は決して低くありません。

 

 

6. 歯周病でも保存治療はできる?

歯周病は、歯そのものではなく、歯を支える周囲の組織(歯肉、歯根膜、歯槽骨)が細菌によって破壊されていく病気です。進行すると歯がぐらぐらになり、最終的には自然に抜け落ちてしまうこともあります。この歯周病に対する治療もまた、歯をその場に保存し、失うことを防ぐための、極めて重要な「保存治療」の一環です。

基本治療の徹底

歯周病治療の根幹は、原因であるプラーク(歯垢)と歯石を徹底的に除去することです。スケーリング(歯石除去)や、歯周ポケットの奥深く、根の表面に付着した歯石や感染物質を取り除くルートプレーニングといった処置が、治療の第一歩となります。軽度から中等度の歯周病であれば、この基本治療を丁寧に行い、患者自身のセルフケアが向上するだけで、歯ぐきの炎症が改善し、歯の動揺が収まることも少なくありません。

歯周外科治療

基本治療だけでは改善が見られない深い歯周ポケットが残る場合は、歯周外科治療が検討されます。これは、歯ぐきを一時的に切開して剥離し、根の表面を直視しながら、取り残した歯石や不良な組織を徹底的に除去する手術です。これにより、細菌の温床となる深いポケットを減少させ、清掃しやすい環境を再構築します。

歯周組織再生療法

さらに進んだ治療法として、歯周病によって失われてしまった歯槽骨や歯根膜などの支持組織を再生させる「歯周組織再生療法」があります。これは歯周外科手術の一環として行われ、特殊な膜(GTR法)や、骨の再生を促すタンパク質(エムドゲインゲルなど)、あるいは人工骨を用いて、歯を支える土台そのものを再生させることを目指す、最先端の保存治療です。この治療法により、かつては抜歯以外に選択肢がなかった、重度の歯周病に罹患した歯でも、その寿命を大幅に延ばすことが可能になりました。

ただし、これらの治療が成功するためには、治療後も継続的なメンテナンスと、患者自身の徹底したプラークコントロールが絶対条件となります。歯周病における保存治療は、歯科医師と患者が二人三脚で、長期的に取り組んでいく必要があるのです。

 


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7. 保存治療が受けられる歯科医院の選び方

質の高い保存治療を受け、大切な歯を救うためには、歯科医院選びが非常に重要な要素となります。単に近い、安いといった理由だけでなく、以下のようないくつかの視点を持って、慎重に判断することが推奨されます。

医院の治療方針・理念の確認

まず、その歯科医院がどのような治療哲学を持っているかを確認しましょう。ウェブサイトやパンフレットなどで「できる限り歯を残す」「精密な治療を心がける」といった、保存治療に対する積極的な姿勢を明確に打ち出している医院は、一つの判断基準になります。初診のカウンセリングで、安易に抜歯やインプラントを勧めるのではなく、歯を残すための選択肢を丁寧に説明してくれるかどうかも、重要なポイントです。

精密な診断・治療を可能にする設備の有無

高度な保存治療、特に精密な根管治療を行う上で、特定の医療機器の存在は質の高さを担保する指標となり得ます。具体的には、肉眼の何倍も拡大して治療部位を観察できる「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)」や、歯や骨の状態を三次元的に把握できる「歯科用CT」です。これらの設備を導入している医院は、それだけ精密な診断と治療に投資している証拠と言えます。ウェブサイトで導入設備を確認したり、電話で問い合わせてみるのも良いでしょう。

十分な説明とコミュニケーション

治療の成否は、術者の技術だけでなく、患者とのコミュニケーションにも大きく左右されます。現在の口の中の状態、治療法の選択肢、それぞれのメリット・デメリット、予後(将来の見通し)、そして費用について、患者が納得できるまで時間をかけて説明してくれる歯科医師を選びましょう。質問しやすい雰囲気があるか、患者の希望や不安に真摯に耳を傾けてくれるかも、信頼関係を築く上で欠かせない要素です。

専門医や認定医の在籍

日本歯内療法学会や日本歯周病学会など、各分野には専門的な知識と技術を持つと認定された専門医や認定医が存在します。特に難しい症例の場合、こうした専門資格を持つ歯科医師が在籍している医院を選択することは、より良い治療結果を得るための一つの有効な手段です。

これらの点を総合的に考慮し、ご自身が安心して長期的に歯の健康を任せられると感じる歯科医院を見つけることが、後悔のない保存治療への第一歩となります。

 

 

8. 保険が適用される治療とされない治療

日本の歯科治療には、国民皆保険制度が適用される「保険診療」と、適用されない「自由診療(自費診療)」の二種類が存在し、保存治療においてもこの区分は明確に分かれています。どちらを選択するかは、治療の質や将来性、そして経済的な側面を考慮して慎重に判断する必要があります。

保険適用の治療

保険診療は、「国民が等しく一定水準の医療を受けられる」ことを目的としており、治療方法、手順、使用できる材料などが国によって細かく定められています。このため、費用は比較的安価(通常3割負担)に抑えられます。

保存治療の分野では、基本的な虫歯治療(コンポジットレジン充填、金属の詰め物)、根管治療、CAD/CAM冠(白い被せ物、適用部位に制限あり)や金属冠などが保険適用の対象となります。最低限の機能回復を、経済的な負担を抑えながら実現できる点が最大のメリットです。

しかし、定められたルールの中での治療となるため、使用できる材料やかけられる時間に制約があり、最新・最善の治療法が常に選択できるわけではないという側面もあります。

保険適用外(自由診療)の治療

自由診療は、保険のルールに縛られず、歯科医師の裁量で国内外の最先端の技術や、審美性・耐久性・生体親和性に優れた材料を自由に用いることができる治療です。

保存治療においては、マイクロスコープや歯科用CTを駆使した精密根管治療、MTAセメントを用いた歯髄保存療法、見た目が天然歯と見分けがつかないオールセラミック製の修復物、歯周組織再生療法などがこれに該当します。治療に十分な時間をかけ、再発リスクの低減や、より高い審美性、長期的な安定性を追求できるのが最大のメリットです。一方で、費用は全額自己負担となるため高額になります。

保険診療が「標準的な治療」であるとすれば、自由診療は「より質の高い、オーダーメイドの治療」と位置づけることができます。どちらが良い・悪いという二元論ではなく、それぞれの特徴を正しく理解し、歯科医師と相談の上で、ご自身の歯の状態、価値観、そして経済状況に合った治療法を選択することが肝要です。

 

9. インプラントと保存治療の違い

歯を失う、あるいは失う可能性に直面した際、現代の歯科医療における二大選択肢として挙げられるのが「保存治療」と「インプラント治療」です。この二つはしばしば比較されますが、その本質は全く異なります。両者の違いを正確に理解することは、適切な意思決定の基礎となります。

根本的な概念の違い

最も大きな違いは、保存治療が「自分自身の歯(臓器)を修復し、維持する」医療であるのに対し、インプラントは「失われた歯(臓器)の機能を人工物で代替する」医療であるという点です。保存治療のゴールは、あくまでも天然歯を延命させることにあります。一方、インプラントは、抜歯を前提とした、その後の機能回復手段です。

構造と感覚の違い

保存された歯には、歯と骨をつなぐ「歯根膜」が存在します。この組織は、噛んだ時の力を感知するセンサーの役割を果たし、私たちに繊細な食感を与え、過大な力がかかった際にはそれを緩和します。一方、インプラントはチタン製の人工歯根が直接骨と結合しているため、この歯根膜が存在しません。そのため、噛んだ時の感触は天然歯とは異なり、クッション機能もありません。

治療対象とリスクの違い

保存治療は、虫歯や歯周病といった「病気」を治療の対象とします。そのため、再感染や歯質の破折といった、生物学的なリスクが常に伴います。インプラントは人工物であるため、虫歯になることはありません。

しかし、「インプラント周囲炎」という、天然歯の歯周病に似た病気にかかるリスクがあり、一度発症すると治療が非常に困難になることがあります。また、外科手術を伴うため、全身的な健康状態によっては適用できない場合もあります。

どちらを選択すべきか

基本的な考え方として、医学的には「保存可能な歯は、可及的に保存を試みるべき」とされています。どんなに優れたインプラントも、天然歯の精緻な機能と構造を完全に再現することはできないからです。

インプラントは、あらゆる手段を尽くしても保存が不可能と診断された場合や、既に歯を失ってしまった場合に初めて検討される、非常に優れた「次善の策」と位置づけるのが適切です。まずは保存治療の可能性を最大限に追求し、その上で最終的な判断を下すことが、後悔のない選択に繋がります。

 


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10. 患者として後悔しない判断のポイント

ご自身の歯の運命を左右する重要な局面で、患者として後悔のない判断を下すためには、いくつかの心構えと行動が求められます。歯科医師に全てを委ねるのではなく、自らが治療の主体であるという意識を持つことが出発点となります。

現状と予後を正確に理解する

まずは、担当の歯科医師から、ご自身の歯が現在どのような状態で、なぜ治療が必要なのか、そして提案された治療法を行った場合に、その歯が将来的にどのくらいの期間、問題なく機能する可能性があるのか(予後)について、具体的な説明を求めましょう。「この治療の5年成功率、10年成功率はどのくらいですか?」といった踏み込んだ質問をすることも重要です。曖昧な理解のまま治療に進むことは、将来的な不満や後悔の原因となります。

すべての選択肢を提示してもらう

一つの治療法だけを勧められた場合でも、「他に考えられる選択肢はありますか?」と尋ねてみることが大切です。保存治療の他のアプローチ、抜歯した場合の選択肢(インプラント、ブリッジ、入れ歯、あるいは何もしないという選択)、それぞれのメリット・デメリット、費用、治療期間を一覧で比較検討できるよう、情報を提供してもらいましょう。

長期的な視点で考える

目の前の費用や治療期間だけでなく、10年後、20年後のご自身の口腔内がどうなっているかを想像してみてください。今回の選択が、将来の健康や生活にどのような影響を与えるかを長期的な視点で考えることが、最良の決断に繋がります。初期費用が高くても、再治療のリスクが低く長持ちする治療法が、結果的に生涯の医療費を抑えることもあります。

セカンドオピニオンを活用する

もし、診断内容や治療方針に少しでも疑問や不安を感じた場合は、ためらわずにセカンドオピニオンを求めるべきです。これは担当医への不信の表明ではなく、患者が最善の治療を選択するために与えられた正当な権利です。異なる専門性を持つ別の歯科医師の意見を聞くことで、より客観的で多角的な視点からご自身の状況を把握でき、最初の診断の妥当性を確認したり、新たな選択肢が見つかったりすることもあります。

最終的な決断を下すのは、歯科医師ではなく患者自身です。十分な情報を集め、深く考え、そして何よりもご自身が「納得」できる道を選択することが、後悔しないための最も重要なポイントなのです。

 

 

その歯、抜く前に立ち止まる勇気。保存治療という最良の選択肢を知る

歯を一本失うということは、単に隙間ができる以上の、深刻な影響を口腔内、ひいては全身の健康に及ぼしかねません。この記事を通じて、「抜歯」という最終宣告が下される前に、現代の歯科医療がいかに多くの「歯を残すための選択肢」を用意しているかをご理解いただけたことでしょう。保存治療は、天然歯の持つ計り知れない価値を再認識し、最新の科学技術と術者の知見を結集して、その場に歯を維持しようとする最善の努力です。

もちろん、すべての歯が保存できるわけではなく、そこにはメリットとリスクが共存します。しかし、ご自身の歯の現状を正確に把握し、あらゆる治療の選択肢について十分な説明を受け、長期的な視点を持って判断すること。そして、信頼できる歯科医師とパートナーシップを築くこと。これらが、後悔のない決断を下すための鍵となります。あなたのその歯には、まだ未来があるかもしれません。

 


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