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院長:内藤 洋平

〒458-0925
名古屋市緑区桶狭間1910
TEL:052-627-0921

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歯科コラム

歯を守るために知っておきたい保存治療の基本知識

  • 虫歯

抜歯は最終手段!自分の歯を生涯守り抜くための保存治療ガイド

現代の歯科医療は、単に歯の痛みをなくす、失った歯を補うという段階から、いかにして自分自身の歯を一本でも多く、そして長く健康に保つかという「保存」の思想へと大きくシフトしています。かつては、深い虫歯や大きな損傷を負った歯は、安易に抜歯が選択されることも少なくありませんでした。

しかし、医療技術の目覚ましい進歩により、今日では「抜歯は最後の手段」と考えられるようになっています。歯の保存治療とは、その名の通り、様々な疾患や外傷によって危機に瀕した歯を、抜かずに機能させ続けるための治療全般を指します。これには、虫歯の進行を食い止めるための詰め物や被せ物、歯の神経にまで達した感染を取り除く根管治療、そして歯が割れたりひびが入ったりした場合の修復などが含まれます。自分の歯で噛める喜び、自然な見た目、そして発音のしやすさなど、天然の歯がもたらす恩恵は計り知れません。

この記事では、ご自身の歯を生涯にわたって守り抜くために、現代歯科医療の中核をなす「保存治療」の基本知識から最新技術、費用感に至るまで、包括的かつ詳細に解説していきます。

 


目次

1. 保存治療が必要とされるケースとは
2. 抜歯を避けるための最新技術
3. 歯の寿命を延ばすメンテナンスの重要性
4. 根管治療との違いと関係性
5. 歯の割れ・ひびにも対応できるか?
6. 治療期間と通院頻度の目安
7. 保存治療後の生活上の注意点
8. 歯科医院との信頼関係が治療成否を左右する
9. 保存治療の費用とコスト感
10. 実際にあった成功事例とそのポイント


 

1. 保存治療が必要とされるケースとは

保存治療が検討される最も一般的な状況は、虫歯が進行し、歯の神経である「歯髄」にまで達してしまった、あるいはその寸前まで迫っている場合です。初期の虫歯であれば、感染した部分を削り取り、レジン(歯科用プラスチック)や金属、セラミックなどで修復する充填治療で対応できます。しかし、虫歯が象牙質の深層部や歯髄にまで到達すると、歯がしみたり、何もしなくてもズキズキと痛む「歯髄炎」という状態を引き起こします。

この歯髄炎には、可逆性(元の健康な状態に戻る可能性がある)と不可逆性(元には戻れない)の二段階があります。可逆性の段階であれば、虫歯を慎重に除去し、歯髄を保護する薬剤を置いてから詰めることで神経を残せる可能性があります。しかし、炎症が進行し、激しい痛みを伴う不可逆性歯髄炎に至った場合や、さらに進行して歯髄が死んでしまい、根の先に膿が溜まる「根尖性歯周炎」を引き起こした場合には、歯髄を取り除く根管治療が必要不可欠となります。これが保存治療の代表的な例です。

また、転倒や事故などによる外傷で歯が欠けたり、折れたり、ひびが入ったりした場合も保存治療の対象です。損傷が軽微であれば、欠けた部分を修復材で補うことで対応できますが、歯髄が露出するほどの大きな破折や、歯の根にまで達するような深い亀裂が入った場合には、歯の保存はより複雑で高度な技術を要します。

さらに、重度の歯周病によって歯を支える骨が溶け、歯がぐらぐらになっているケースでも、状況によっては保存治療が試みられることがあります。歯周組織の再生療法などと並行して、歯の根の状態を改善することで、抜歯を回避できる可能性が残されています。過去に行った治療、例えば古い詰め物や被せ物の下で二次的な虫歯(二次う蝕)が発生し、内部で大きく広がってしまった場合も、再治療によって歯を保存する道を探ることになります。これらのケースすべてに共通するのは、「安易に抜歯を選択せず、あらゆる可能性を探って歯の機能と存在を維持しよう」という、保存治療の根本的な理念です.

 

 

2. 抜歯を避けるための最新技術

かつては抜歯以外に選択肢がなかったような難症例でも、近年の医療技術の革新により、歯を保存できる可能性は飛躍的に向上しました。これらの最新技術は、診断の精度を高め、治療の確実性を向上させることで、歯科医師の「目」と「手」を強力にサポートしています。

その筆頭に挙げられるのが、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)の活用です。マイクロスコープは、治療部位を肉眼の数倍から20倍以上にまで拡大して明瞭に観察することを可能にします。これにより、従来は歯科医師の経験や勘に頼らざるを得なかった、歯の根の中の複雑な構造、髪の毛ほどの細さの神経の管、見逃しやすい微細なひび割れなどを、正確に視認しながら治療を進めることができます。特に、再治療が必要な根管治療などでは、過去の治療で残された感染源を徹底的に除去するために、マイクロスコープは不可欠な存在となりつつあります。

診断技術においては、歯科用CT(コーンビームCT)が大きな変革をもたらしました。従来の二次元的なレントゲン写真では捉えきれなかった、歯の根の形態、本数、湾曲の具合、さらには骨の吸収状態などを、三次元の立体画像として詳細に把握できます。これにより、治療前に正確な治療計画を立案することが可能となり、偶発的な事故のリスクを低減させ、治療の成功率を大幅に引き上げます。例えば、根の先にできた病巣の大きさや広がりを3Dで確認することで、外科的なアプローチが必要かどうかの判断もより的確に行えるようになりました。

治療に用いる材料も進化しています。代表的なものにMTAセメントがあります。MTAセメントは、高い封鎖性と殺菌性を持ち、かつ生体親和性に優れた材料です。従来では保存が困難であった、歯の根に穴が開いてしまった場合(パーフォレーション)の修復や、歯髄を温存するための覆髄処置、外科的歯内療法における根の先端の封鎖などに用いられ、多くの歯を抜歯から救っています。この材料の登場により、治療の選択肢が広がり、より長期的な予後が期待できるようになりました。これらの先進的な技術や材料は、すべての歯科医院で導入されているわけではありませんが、歯をできる限り残したいと考えるならば、こうした設備や知識を備えた医療機関を選択することが、重要な鍵となります。

 

 

3. 歯の寿命を延ばすメンテナンスの重要性

保存治療によって危機を脱した歯は、それで終わりではありません。むしろ、そこからがその歯の寿命を本当の意味で延ばすための新たなスタートラインと言えます。治療を施した歯は、いわば「修復歴のある歯」であり、何も手が加えられていない健康な歯(生活歯)と比較すると、構造的に脆弱であったり、再発のリスクを抱えていたりする点を理解しておく必要があります。

例えば、大きな虫歯治療で神経を抜いた歯(失活歯)は、歯髄からの栄養供給が途絶えるため、時間と共に歯質が脆くなり、乾燥した木のように割れやすくなる傾向があります。また、詰め物や被せ物と、ご自身の歯との間には、どんなに精密に治療してもミクロの隙間が存在します。日々のブラッシングが不十分だと、その境界部分にプラーク(歯垢)が蓄積し、そこから二次的な虫歯が発生するリスクは常に付きまといます。

そこで極めて重要になるのが、治療後の定期的なプロフェッショナルメンテナンスです。歯科医院で受けるメンテナンスでは、まず専門家である歯科衛生士が、染め出しなどを用いて磨き残しがないかを徹底的にチェックし、患者さん一人ひとりのお口の状態や歯並びに合わせた効果的なブラッシング方法を指導します。そして、ご家庭でのセルフケアでは除去しきれない、硬くこびりついた歯石や、細菌の巣窟であるバイオフィルムを、専用の機器を用いて徹底的に清掃(PMTC)します。

さらに、定期検診では歯科医師が、治療した歯の被せ物の状態、歯と修復物の境目に段差や隙間が生じていないか、レントゲン撮影による根の状態の確認など、多角的な視点からチェックを行います。万が一、ごく初期の虫歯や歯周病の兆候、修復物の不具合が見つかったとしても、早期に発見し対処することで、大事に至る前に対処でき、歯へのダメージを最小限に食い止めることが可能です。治療にかけた時間と費用を無駄にしないためにも、そして何よりも大切なご自身の歯を一日でも長く機能させ続けるためにも、治療完了後の定期的なメンテナンスは、治療そのものと同等、あるいはそれ以上に重要であると認識すべきです。

 


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4. 根管治療との違いと関係性

「保存治療」と「根管治療」という言葉は、しばしば混同されがちですが、その関係性を正しく理解することは、ご自身の受ける治療内容を把握する上で非常に重要です。結論から言うと、根管治療は、数ある保存治療の中の、特に専門性が高く重要な一分野と位置づけられます。

まず、「保存治療」とは、冒頭でも触れたように、歯を抜かずに保存するための歯科治療全般を指す、非常に広い概念です。これには、ごく初期の虫歯を削って詰める単純な充填処置、ある程度の大きさの虫歯に対して型取りをして製作するインレーやアンレー、歯全体を覆うクラウン(被せ物)の治療、さらには歯周病で揺れている歯を固定する処置なども含まれます。つまり、歯を失う原因となる様々な病態に対して、抜歯を回避するために行われるアプローチの総称が保存治療なのです。

一方、「根管治療」は、その保存治療の中でも、特に歯の内部、すなわち歯髄(神経や血管が含まれる組織)が納まっている「根管」という管に対して行われる専門的な治療を指します。虫歯が歯髄にまで達してしまった場合や、歯の根の先に膿が溜まってしまった場合に、感染したり壊死したりした歯髄組織を専門の器具で丁寧に取り除きます。そして、根管の内部を何度も洗浄・消毒し、細菌が存在しない無菌的な状態を作り出した後、再び細菌が侵入しないように専用の材料で隙間なく充填し、密閉します。

この関係性を家づくりに例えるならば、保存治療が「家全体を修復・保存するプロジェクト」だとすると、根管治療は「その家の土台や基礎を徹底的に補強・修繕する工事」に相当します。いくら立派な壁や屋根(被せ物)を作っても、その下の基礎(歯の根)が腐っていたり、脆弱だったりすれば、家全体がすぐに駄目になってしまいます。同様に、歯を長期的に保存するためには、まず根管治療によって歯の内部を徹底的にクリーンにし、安定した土台を築き上げることが絶対条件となります。そして、この堅固な土台の上に、最終的な被せ物などを装着することで、初めて歯は噛むという機能を取り戻し、長期的に口腔内で機能し続けることが可能になるのです。したがって、根管治療は、歯の保存を達成するための、最も根幹をなす重要な治療の一つと言えるでしょう。

 

5. 歯の割れ・ひびにも対応できるか?

歯の割れやひび、いわゆる「歯根破折」や「亀裂歯」は、保存治療の中でも特に診断と治療が難しい分野です。これらの問題に対応できるかどうかは、ひびの入った場所、方向、そして深さによって大きく左右されます。

まず、歯の表面のエナメル質にだけ入っているごく浅いひび(マイクロクラック)であれば、多くの場合、痛みもなく、特に治療を必要としないことがほとんどです。しかし、ひびが象牙質にまで達すると、冷たいものや熱いものがしみたり、噛んだ時に特定の場所で鋭い痛みを感じたりすることがあります。この段階であれば、ひびの広がりを防ぐために、歯全体を覆うクラウン(被せ物)で補強することで、歯を保存できる可能性が高いです。ひびが歯髄にまで達している場合は、激しい痛みを伴うことが多く、根管治療を行った上で、クラウンを装着する必要があります。

最も深刻なのは、ひびが歯の根っこにまで達している「垂直歯根破折」です。これは、特に神経を抜いた歯(失活歯)に起こりやすく、噛む力がくさびのように働き、根を垂直に割ってしまう状態です。この場合、ひびの隙間から細菌が侵入し、歯を支える骨を溶かしてしまうため、歯ぐきの腫れや膿の排出といった症状が見られます。従来の診断法では確定診断が難しかったのですが、歯科用CTを用いることで、破折線の有無をより正確に評価できるようになりました。

垂直歯根破折が起きてしまった場合、残念ながら多くのケースで抜歯が選択されます。なぜなら、一度割れてしまった根を完全に接着し、細菌の侵入を長期的に防ぐ確実な方法が、現在のところ確立されていないからです。しかし、ごく一部のケース、例えば破折線が根の先端の一部に限局している場合などでは、外科的に根の先端を切除する歯根端切除術と同時に、特殊な接着剤で破折片を修復する試みがなされることもあります。これは非常に高度な技術を要し、成功率も100%ではありませんが、抜歯を回避するための最後の選択肢として検討されることがあります。

いずれにせよ、歯のひびは早期発見・早期対応が鍵となります。噛んだ時の違和感や一過性の痛みを放置せず、早めに歯科医師に相談し、マイクロスコープや歯科用CTといった精密な検査機器を用いて、ひびの状態を正確に診断してもらうことが、大切な歯を守るために非常に重要です。

 

 

6. 治療期間と通院頻度の目安

保存治療にかかる期間と通院頻度は、治療対象となる歯の状態や治療内容によって大きく異なります。一概に「何回で終わる」と断言することは難しく、個々のケースに応じて変動することを理解しておく必要があります。

最も単純なケースは、神経に達していない比較的小さな虫歯の充填治療です。この場合、虫歯部分を削り、コンポジットレジンという歯科用プラスチックを詰める処置であれば、通常は1回の通院で完了します。治療時間も30分から1時間程度でしょう。

一方、虫歯が大きく、型取りをして詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)を製作する必要がある場合は、最低でも2回の通院が必要です。1回目の通院で歯を削って形を整え、精密な型取りを行います。その後、歯科技工所で修復物が製作されるまでの1週間から2週間程度の期間をおいて、2回目の通院で完成した修復物を歯に装着します。

保存治療の中でも特に時間と回数を要するのが、根管治療です。歯の根の中は非常に複雑な構造をしており、感染を完全に取り除くためには、丁寧で精密な作業が求められます。前歯のように根が1本で比較的まっすぐな歯であれば、2回から3回の通院で完了することもあります。しかし、奥歯(大臼歯)は根が複数本あり、しかも曲がっていたり枝分かれしていたりすることが多いため、治療はより複雑になります。根の中に膿が溜まっているような感染が著しいケースでは、根管内に薬剤を詰めて消毒効果を待つ期間が必要になるため、通院回数は4回、5回、あるいはそれ以上に及ぶことも珍しくありません。1回の治療時間は30分から90分程度が目安ですが、マイクロスコープを用いた精密な治療では、それ以上の時間を要することもあります。

根管治療が完了した後、最終的な被せ物(クラウン)を装着するために、さらに追加で2回程度の通院が必要となります。したがって、奥歯の深い虫歯で根管治療から被せ物までを行う場合、治療開始から完了までには、通院回数が合計で5回から8回程度、期間としては1ヶ月半から3ヶ月程度かかることも想定しておく必要があります。治療を途中で中断してしまうと、仮の蓋が取れて細菌が再感染し、それまでの治療が無駄になってしまうだけでなく、最悪の場合は抜歯に至る可能性もあります。定められた通院間隔を守り、根気強く治療を続けることが、歯を救うためには不可欠です。

 


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7. 保存治療後の生活上の注意点

保存治療を無事に終えた後も、その歯を長持ちさせるためには、日々の生活の中でいくつかの点に注意を払う必要があります。治療によって機能を取り戻した歯も、元の健康な歯と全く同じ状態に戻ったわけではないという認識を持つことが大切です。

まず、治療直後の注意点として、特に根管治療を受けた歯は、最終的な被せ物が入るまでは非常に脆い状態にあることを理解してください。根管治療中は仮の蓋がしてありますが、この状態で硬いものを噛むと、歯が欠けたり、割れたりするリスクが非常に高くなります。最終的な土台(コア)を立てて、クラウンで歯全体を補強するまでは、治療中の歯で強く噛むことは極力避けるべきです。また、麻酔が効いている間は、唇や頬の内側を誤って噛んでしまうことがあるため、感覚が完全に戻るまでは食事を控えるのが賢明です。

長期的な視点での注意点としては、過度な負担をかけないことが挙げられます。セラミックや金属のクラウンは非常に硬い素材ですが、その下の歯の根が耐えられる力には限界があります。氷や硬い木の実、飴などを強い力で噛み砕くような行為は、治療した歯だけでなく、健康な歯にとっても破折のリスクを高めるため、避けるべき習慣です。

特に注意が必要なのが、就寝中の歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)の癖がある方です。ブラキシズムは、体重の数倍もの異常な力を歯や顎に加えてしまい、修復物を破損させたり、歯の根を割ってしまったりする大きな原因となります。歯科医師から歯ぎしりを指摘された場合は、歯を保護するためのマウスピース(ナイトガード)を就寝時に装着することが、治療した歯の寿命を延ばす上で極めて効果的です。

そして、最も基本的ながら最も重要な注意点は、日々の丁寧な口腔ケアと定期的なメンテナンスを継続することです。被せ物と歯ぐきの境目は、プラークが溜まりやすい不潔域になりがちです。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを併用し、境目を意識して清掃することが、二次的な虫歯や歯周病を防ぐ鍵となります。治療によって得られた快適な状態を維持するためには、こうした日々の地道な努力と専門家による定期的なチェックが欠かせないのです。

 

 

8. 歯科医院との信頼関係が治療成否を左右する

保存治療、特に根管治療のような複雑で複数回にわたる治療においては、歯科医師や歯科医院との間に築かれる信頼関係が、治療の成功に極めて大きな影響を与えます。これは単なる精神的な問題ではなく、治療の質そのものに関わる重要な要素です。

まず、信頼関係の基礎となるのは、十分なコミュニケーションと丁寧な説明です。優れた歯科医師は、治療を始める前に、現在の歯がどのような状態にあるのか、なぜその治療が必要なのか、どのような治療の選択肢があり、それぞれのメリット・デメリット、成功率、そして将来的なリスクは何かを、専門用語を避け、レントゲン写真や図、模型などを用いて分かりやすく説明します。患者が自身の口の中で何が起き、これから何が行われるのかを正確に理解し、納得した上で治療に臨む「インフォームド・コンセント(説明と同意)」のプロセスは、信頼関係構築の第一歩です。

治療の過程においても、コミュニケーションは重要です。保存治療は精密な作業の連続であり、時には治療中に予期せぬ状況、例えば隠れた根管が見つかったり、ひびが想定より深かったりすることがあります。そうした際に、歯科医師が状況を速やかに患者に伝え、治療方針の変更について相談できる関係性があれば、患者は安心して治療を任せることができます。逆に、説明が不十分で、何をされているか分からないまま治療が進むと、患者は不安や不信感を募らせ、治療への協力体制も得られにくくなります。

また、保存治療は一度完了すれば終わりというものではなく、長期的な予後を見守っていく必要があります。治療後の定期メンテナンスに通い続けるモチベーションを維持するためにも、「この先生になら、自分の歯の将来を任せられる」という信頼感は不可欠です。患者側も、痛みや違和感など、気になることがあれば些細なことでも遠慮なく質問し、伝える姿勢が大切です。

歯科医院を選ぶ際には、単に技術が高いかどうかだけでなく、ご自身の疑問や不安に真摯に耳を傾け、対話を重視してくれるかどうかという視点を持つことが、最終的に良好な治療結果へと繋がります。歯科医療は、術者である歯科医師と、それを受ける患者との共同作業です。強固な信頼関係という土台があってこそ、高度な治療技術も最大限に活かされ、困難な状況にある歯を救うという共通の目標を達成することができるのです。

 

9. 保存治療の費用とコスト感

保存治療にかかる費用は、治療内容や使用する材料、そして健康保険が適用されるか否かによって大きく変動します。日本の医療制度では、多くの歯科治療が国民皆保険制度の対象となっていますが、より高度な技術や審美性・耐久性の高い材料を求める場合は、保険適用外の自由診療(自費診療)を選択することになります。

保険適用の範囲内で保存治療を行う場合、患者が窓口で支払う自己負担額(通常は3割負担)は、比較的安価に抑えられます。例えば、前歯の小さな虫歯に対するコンポジットレジン充填であれば数千円程度、奥歯の銀歯の詰め物(メタルインレー)であれば3,000円から5,000円程度が目安です。根管治療についても保険が適用され、歯の種類や根の数によって費用は異なりますが、数千円から1万円強の範囲に収まることが一般的です。根管治療後に装着する被せ物も、前歯や小臼歯には白いCAD/CAM冠(保険適用のハイブリッドセラミック)が使えるようになり、奥歯の金属冠(いわゆる銀歯)と合わせて、1本あたり1万円前後で治療が可能です。

一方で、自由診療を選択した場合、費用は全額自己負担となるため、高額になります。しかし、それに見合うだけのメリットが存在します。例えば、自由診療の根管治療では、マイクロスコープや歯科用CTといった最新設備を駆使し、十分な時間をかけて精密な治療が行われることが多く、治療の成功率や歯の長期的な予後が向上する可能性が高まります。この場合の費用は、歯科医院によって異なりますが、1歯あたり5万円から15万円以上になることもあります。

最終的な修復物においても、自由診療では材料の選択肢が広がります。審美性に優れ、汚れが付着しにくく二次虫歯になりにくいセラミック製のインレーやクラウンは、1本あたり8万円から20万円程度が相場です。耐久性の高いゴールドや、強度と美しさを両立したジルコニアなども選択できます。

費用を考える上で重要なのは、短期的な支出だけでなく、長期的な視点を持つことです。自由診療は初期投資こそ高額ですが、質の高い治療と優れた材料によって再治療のリスクを低減できれば、結果的に生涯にかかる医療費を抑えられる可能性があります。また、もし歯を失ってしまった場合に必要となるインプラントやブリッジといった治療は、さらに高額な費用がかかることが一般的です。ご自身の歯を一本でも多く残すための「投資」として、それぞれの治療法の価値を理解し、歯科医師とよく相談した上で、ご自身の価値観やライフプランに合った選択をすることが賢明と言えるでしょう。

 


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10. 実際にあった成功事例とそのポイント

ここでは、保存治療によって抜歯を免れた、二つの典型的なケースを仮説的に紹介します。これらの事例から、成功の鍵が見えてきます。

一つ目の事例は、40代男性の奥歯のケースです。数年前に治療した銀歯の下で虫歯が再発し、何もしなくてもズキズキと激しく痛むという主訴で来院されました。レントゲン検査の結果、虫歯は神経にまで達し、根の先には大きな膿の袋(根尖病巣)が確認されました。以前通院していた歯科医院では「ここまで大きいと抜歯してインプラントにした方が良い」と診断されていました。しかし、患者自身の「できる限り自分の歯を残したい」という強い希望があり、セカンドオピニオンを求めて来院されました。

ここでの成功のポイントは、まず歯科用CTによる三次元的な精密診断でした。CT画像により、複雑に湾曲した根管の走行と、病巣の正確な大きさ、そして周囲の骨の状態を詳細に把握することができました。治療では、マイクロスコープを用いて、通常では見えない根管の内部を拡大視しながら、感染源を徹底的に除去。従来では見逃されがちだった微細な分岐も見つけ出し、清掃・消毒を完璧に行いました。数回にわたる丁寧な根管治療の結果、根の先の病巣は徐々に縮小し、痛みや腫れといった症状も完全に消失しました。最終的に、強度と審美性を兼ね備えたジルコニアセラミックのクラウンを装着し、男性は再びご自身の歯でしっかりと噛める生活を取り戻すことができました。このケースの成功ポイントは、諦めずに可能性を探った患者の意志と、CTとマイクロスコープを駆使した歯科医師の精密な診断・治療技術にあります。

二つ目の事例は、30代女性の前歯のケースです。食事中に硬いものを噛んだ瞬間、前歯に「ピキッ」という感覚があり、その後、噛むと痛みを感じるようになりました。診査の結果、歯にひび(クラック)が入っていることが疑われました。ここでの成功のポイントは、早期の対応と、過剰な介入を避けたことです。マイクロスコープで詳細に観察したところ、幸いにもひびは歯の神経には達しておらず、歯の根にも及んでいませんでした。ここで安易に歯を大きく削って全体を覆うクラウンを選択することもできましたが、まだ若い患者の前歯であることを考慮し、可能な限り自分の歯質を残す方針が選択されました。

治療では、まずひびが入っている部分を特殊な接着性レジンで丁寧に封鎖し、ひびがそれ以上広がらないように保護しました。そして、噛み合わせを精密に調整し、この歯に過度な力がかからないようにしました。さらに、就寝中の食いしばりの癖があったため、歯を守るためのナイトガードを作製し、毎晩装着してもらうように指導しました。数年後の経過観察でも、ひびの進行は見られず、痛みも再発していません。最小限の介入で歯の破折を防ぎ、審美性を損なうことなく歯を保存できたこのケースの成功ポイントは、正確な診断に基づく保存的なアプローチの選択と、ナイトガードの使用といった患者自身の協力的なメンテナンスにありました。

これらの事例は、現代の保存治療が単なる技術だけでなく、的確な診断、患者とのコミュニケーション、そして長期的な管理によって成り立っていることを示しています。

 

 

あなたの歯はまだ救える!保存治療で未来の健康を手に入れる

本記事では、かけがえのないご自身の歯を生涯にわたって守り抜くための「保存治療」について、多角的な視点から詳しく解説してきました。保存治療が必要となる具体的なケースから、マイクロスコープや歯科用CTといった抜歯を回避するための最新技術、そして治療後の歯の寿命を延ばすために不可欠なメンテナンスの重要性まで、ご理解いただけたことと存じます。

また、根管治療との関係性や、困難とされる歯のひび割れへの対応、さらには治療期間や費用感、歯科医院との信頼関係の重要性に至るまで、幅広い情報を提供しました。現代の歯科医療の目標は、失ったものを取り戻すこと以上に、今あるものをいかにして守り抜くかにあります。痛みや違和感を放置せず、早期に信頼できる歯科医師に相談することが、抜歯という最悪の事態を避けるための最も確実な一歩です。この記事が、皆様の歯の健康に対する意識を高め、適切な治療を選択するための一助となれば幸いです。

 


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