
この記事でわかること
親知らずを抜くべき歯と残せる歯の境界線
斜め・半埋伏の歯が起こす痛みと腫れの仕組み
レントゲンとCTで神経との距離を確かめる手順
東海市で親知らずを抜くか迷っている方の多くは、痛みがないのに抜く必要があるのか、それとも今抜かないと後悔するのかという二択で立ち止まっています。結論から申し上げますと、判断の分かれ目は「痛みの有無」ではなく「生え方の角度」と「清掃できるかどうか」の二点にあります。まっすぐ生えて歯磨きが届く一本は残す価値がありますが、斜めや水平に埋まった一本は将来的にトラブルを起こす確率が高くなります。この記事では、レントゲンやCTで何を確認しているのか、歯科医院が抜歯を勧める根拠は何かを、診療現場で実際に用いられている判断軸に沿って解説します。読み終えるころには、ご自身の親知らずが「今すぐ抜くべき歯」なのか「経過観察でよい歯」なのかを、歯科医院での説明を聞きながら自分で判断できるようになります。
目次
1. まっすぐなら残す選択もある
親知らずがまっすぐ生えていて、噛み合う相手の歯が存在し、歯ブラシが根元まで届く状態であれば、抜かずに残す判断が妥当です。理由は単純で、親知らずも他の歯と同じ天然歯であり、機能している歯をわざわざ失う理由がないためです。上下の親知らずが正常に噛み合っている場合、その一本は奥歯としての咀嚼を分担しています。将来的に第二大臼歯を失ったとき、親知らずを移植歯として活用できる可能性も残ります。実際、歯の移植は保険適用となるケースがあり、条件が合えばインプラントより低侵襲な選択肢になります。ただし残す条件は厳しく、上下の親知らずが両方とも正常に萌出している人は決して多くありません。片側だけまっすぐでも、噛み合う相手がいなければ徐々に伸び出し、頬の粘膜を噛む原因になります。現場でよく見られるのは、「上はまっすぐ、下は斜め」という非対称なパターンです。この場合、下を抜いた結果として上が伸び出し、数年後に上も抜くことになる流れがしばしば起こります。判断を誤らないためには、まず4本すべての生え方を同時に把握することが出発点になります。歯科医院を受診する際は「1本だけ診てほしい」ではなく「親知らず全体の方針を知りたい」と伝えると、より的確な説明を受けられます。
残す条件を満たす歯の見分け方
残せる親知らずには、いくつかの共通した特徴があります。歯冠全体が歯ぐきの上に出ており、隣の第二大臼歯との間に段差がなく、デンタルフロスが引っかからずに通る状態です。さらに、対合する歯としっかり接触して噛めていることが条件になります。この4条件をすべて満たす場合、抜歯の必要性は低いと考えられます。逆に、鏡で見て歯の一部しか見えない、あるいは頬側に傾いていると感じる場合は該当しません。自己判断が難しいときは、パノラマレントゲン1枚で全体像が確認できますので、まずは撮影を依頼してみてください。
残した場合に必要となる管理
残す選択をした場合、その後の管理を継続する前提が伴います。親知らずは口腔内の最後方に位置するため、通常の歯ブラシでは毛先が届きにくい部位です。タフトブラシと呼ばれる毛束が1つだけのブラシを併用し、1日1回は意識して磨く習慣が必要になります。加えて、半年に1回程度の定期検診で虫歯や歯周ポケットの深さを確認しておくと安心です。管理を怠ると、残したはずの歯が数年後に大きな虫歯となり、結局抜歯に至る例が少なくありません。残す判断とは、清掃と検診を続ける約束と一体であると理解しておいてください。
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2. 隣の歯を押して歯並びを崩す力
斜めに生えた親知らずが手前の第二大臼歯を押し続けると、歯列全体に前方への圧力が伝わります。なぜこの力が問題になるかというと、親知らずは萌出しようとする方向にしか進めず、まっすぐ立ち上がれない場合は隣の歯を支点にして押し込む形になるためです。押される側の第二大臼歯は、根の側面から圧を受け続けます。この状態が数年続くと、接触点がずれて食べ物が詰まりやすくなり、清掃困難な隙間が固定化します。矯正治療を終えた方が後戻りを訴えるケースでは、親知らずの存在が一因となっている場合があります。実務での傾向として、20代前半で矯正を完了した方が数年後に前歯のわずかな重なりを気にして再来院し、レントゲンで水平に埋まった親知らずが見つかる流れは珍しくありません。ただし、歯並びの乱れがすべて親知らずのせいであると断定はできません。加齢による歯列の変化や噛み癖も関与します。それでも、押す力を取り除けるなら取り除いておくという判断は、矯正後の安定を守る上で合理的です。すでに矯正装置を外している方は、保定装置の使用状況とあわせて親知らずの位置を一度確認しておくことをおすすめします。
第二大臼歯が受けるダメージ
親知らずに押された第二大臼歯は、根の表面が接触部分から溶かされることがあります。これは歯根吸収と呼ばれる現象で、自覚症状がほとんどないまま進行する点が厄介です。発見されるのは多くの場合、別の理由でレントゲンを撮影したときです。吸収が根の中央まで達すると、第二大臼歯そのものを保存できなくなります。親知らず1本を残した結果、より重要な奥歯を失う事態は避けたいところです。30歳前後で一度レントゲンによる確認を受けておくと、この種の見落としを防げます。
前歯の重なりと親知らずの関係
下の前歯が重なってきたと感じる方は少なくありません。この変化に親知らずがどの程度関与しているかについては、歯科医師の間でも見解が分かれています。押す力だけで前歯まで動くとは限らず、舌の癖や噛みしめも影響するためです。ただし矯正治療を予定している場合は話が別で、治療前に親知らずを抜いておく方針が採られることがあります。装置で歯を動かす際、後方からの圧力があると計画通りに動かせない可能性があるためです。矯正を検討中の方は、初回相談の段階で親知らずの扱いを確認しておくと、治療期間の見通しが立てやすくなります。

3. 東海市の患者に多い部分萌出の悩み
東海市の歯科医院で親知らずの相談として最も多いのは、歯の一部だけが顔を出した「部分萌出」の状態です。この形が相談件数を集める理由は、完全に埋まっている歯とも完全に生えた歯とも異なり、症状が出たり消えたりを繰り返すためです。歯ぐきが歯冠の一部を覆っているため、その隙間に細菌と食物残渣が入り込みます。歯ブラシの毛先は歯ぐきの下まで届かず、うがいでも洗い流せません。結果として、疲れやストレスで免疫力が落ちたタイミングで急に腫れるという経過をたどります。多くの方は、痛みが数日で引くため受診を先延ばしにします。しかし2026年現在の診療現場では、症状が消えても炎症の温床そのものは残っていると説明されるのが一般的です。実務での傾向として、部分萌出の親知らずで年に2回以上腫れを繰り返した方は、その後も同じ周期で症状が再燃しています。名古屋南部から知多半島にかけての地域では、通勤や仕事の繁忙期に症状が出て来院されるケースが目立ちます。腫れが引いたときこそ、落ち着いた状態で今後の方針を相談する好機だと考えてください。
歯ぐきが被さった状態で起きること
歯冠を覆う歯ぐきは、専門的には歯肉弁と呼ばれます。この歯肉弁と歯の間には、深さ数ミリのポケットが形成されます。ポケット内は酸素が少なく、嫌気性菌が増殖しやすい環境です。ここで炎症が起きると智歯周囲炎という状態になり、噛むたびに痛みを感じます。さらに上の親知らずが伸びてこの歯肉弁を噛み込むと、傷が付いて炎症が悪化します。上下両方を診なければ原因を特定できないのは、この連鎖があるためです。
通院しやすさが判断に与える影響
抜歯を決めるうえで、通院のしやすさは無視できない要素です。下の親知らずを抜いた場合、翌日の消毒と1週間後の抜糸で最低2回の再診が必要になります。通いやすい距離の歯科医院を選ぶことは、術後管理の質に直結します。東海市内で仕事帰りに立ち寄れる医院を選んでおくと、腫れや痛みが強まったときにもすぐ相談できます。逆に遠方の医院を選ぶと、異変を感じても我慢してしまいがちです。抜歯の予定を立てる際は、週末を挟んだ木曜か金曜を選ぶと生活への影響を抑えられます。
4. 半分埋まった歯が繰り返す腫れ
半埋伏の親知らずによる腫れは、薬で一度治まっても根本的な解決にはなりません。理由は、抗菌薬が細菌数を一時的に減らすだけで、細菌が住み着く構造そのものは変わらないためです。典型的な経過は、違和感から始まり2日ほどで噛むと痛む状態になり、3日目に頬の腫れと開口障害が現れるという流れです。抗菌薬を3日から5日服用すると症状は軽快しますが、数か月後に同じ経過を繰り返します。よくある失敗パターンは、腫れているときに「今すぐ抜いてほしい」と希望されるケースです。急性炎症の最中は麻酔が効きにくく、抜歯後の感染リスクも上がるため、多くの医院ではまず消炎処置を優先します。炎症が落ち着くまでの期間は、おおむね1週間から2週間です。この待機期間を「治った」と誤解して来院をやめてしまうと、次の腫れまで何の対策も取れません。腫れを繰り返す方は、症状が消えてから2週間以内に再受診し、抜歯の日程を決めるという手順で進めてください。年に2回以上の腫れがある場合、抜歯を検討する明確な目安になります。
注意
腫れや強い痛みがある状態での抜歯は、麻酔が効きにくく術後の腫脹も大きくなる傾向があります。まずは消炎処置を受け、症状が落ち着いてから抜歯日を設定してください。妊娠中の方、抗血栓薬を服用中の方は、処置の可否や時期が個別に変わりますので必ず事前に申告が必要です。
腫れが起こる周期とその引き金
智歯周囲炎の発症には、体調の変化が強く関わります。睡眠不足が続いた時期、繁忙期の残業が重なった時期、風邪の治りかけなどが典型的な引き金です。免疫の働きが一時的に低下すると、ポケット内の細菌が優位になります。同じ生活を送っていても、腫れる人と腫れない人がいるのはこのためです。自分の腫れた時期を記録しておくと、パターンが見えてきます。年2回以上の再発は抜歯を検討する目安として、受診時に伝えてください。
放置した場合に広がる範囲
炎症を放置し続けると、影響は親知らず周辺にとどまりません。隣接する第二大臼歯の遠心側に虫歯が生じ、深部に達すると神経の処置が必要になります。さらに炎症が顎の下や首の方向へ広がると、飲み込みにくさや発熱を伴う状態に進みます。口が指2本分開かない、飲み込むと痛む場合は緊急性が高い状態です。この段階では夜間や休日でも医療機関の受診が必要になります。日常的な腫れの段階で対処を決めておくことが、こうした重い経過を避ける現実的な方法です。
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5. レントゲンで神経との距離を測る
下の親知らずを抜く前には、歯の根と下歯槽神経の位置関係を必ず確認します。この確認が欠かせない理由は、下顎骨の内部を走る下歯槽神経が下唇やあごの皮膚の感覚を担っており、損傷すると麻痺が残る可能性があるためです。最初に撮影するのはパノラマレントゲンで、上下の歯列全体が1枚に写ります。この画像で、歯根の先端が神経管に重なって見えるかどうかを判定します。重なっていなければ通常の手順で抜歯が進みます。問題は根と神経管が画像上で接して見える場合で、パノラマは平面画像のため前後方向の位置関係が分かりません。実務での傾向として、パノラマで接触が疑われた症例のうち、実際に神経と密着しているのは一部にとどまります。多くは頬側または舌側にずれており、CTで確認して初めて安全な距離が判明します。よくある失敗は、レントゲンの説明を受けずに抜歯へ進んでしまうことです。撮影した画像を実際に見せてもらい、根の先がどこにあるかを説明してもらうことをおすすめします。疑問が残る場合は、CT撮影の必要性について遠慮なく質問してください。
パノラマ画像で読み取れる情報
パノラマレントゲンからは、多くの判断材料が得られます。親知らずの傾き角度、埋まっている深さ、根の本数と形、そして隣の歯との接触状況です。根が2本以上に分かれて湾曲している場合は、抜歯の難易度が上がります。また歯を覆う骨の厚みも把握でき、骨を削る量の見通しが立ちます。撮影時間は10秒程度で、被曝線量は日常生活で受ける自然放射線の数日分に相当します。初診時に1枚撮っておく価値は十分にあります。
平面画像では分からない立体的な位置
パノラマは立体の顎を1枚の平面に投影した画像です。そのため、重なって見えても実際には数ミリ離れているという状況が起こります。逆に離れて見えて密着している場合もあり、平面画像だけでは断定できません。神経管が根の頬側にあるのか舌側にあるのかは、CTでしか分かりません。この情報が得られると、抜歯時にどの方向から歯を分割し、どちらへ脱臼させるかの計画を立てられます。安全性を高める判断材料として、必要と判断された場合のCT撮影は受けておくのが確実です。

6. 抜かずに経過を見る条件
親知らずが完全に骨の中に埋まり、周囲に炎症の兆候がなく、隣の歯を圧迫していない場合は、抜かずに定期観察へ回す判断が成り立ちます。この方針が選ばれる理由は、完全埋伏歯の抜歯には骨を削る処置が伴い、症状のない歯に対して侵襲を加える利益が乏しいためです。観察へ回す条件は3つあります。歯冠を包む袋状組織の拡大がないこと、隣接歯の根に吸収像がないこと、そして本人に痛みや違和感がないことです。この3点が揃えば、1年から2年に1回のレントゲン確認で経過を追います。ただし観察は「放置」とは異なります。埋まったままの親知らずでも、周囲に嚢胞と呼ばれる袋状の病変が生じる場合があり、これは自覚症状なく進行します。現場でよく見られるのは、10年以上受診していない方に偶然見つかる大きな嚢胞です。骨が薄くなってから発見されると、処置の規模が大きくなります。観察を選ぶなら、検診の間隔を自分で管理する責任が伴うと理解してください。全身疾患の治療中や妊娠中も、抜歯を延期して観察する期間に該当します。次回の受診時期を診察券に書き込むなど、忘れない仕組みを作っておくことが実際的な対策になります。
経過観察を選べる条件
観察に切り替える具体的な基準
観察を選ぶ判断は、年齢と全身状態も加味して決まります。50代以降で症状がなく、骨が硬化して抜歯の難易度が上がっている場合、無理に抜くより経過を追う方針が優先されます。糖尿病のコントロールが不安定な時期や、心疾患で抗血栓薬を服用中の方も同様です。抜歯によるリスクが得られる利益を上回るなら、観察が正しい選択になります。担当医には現在服用中の薬をすべて伝えてください。お薬手帳を持参するだけで、判断の精度は大きく変わります。
観察中に方針を変えるサイン
観察していた親知らずでも、途中で抜歯へ切り替える場面があります。奥歯の奥に鈍い違和感が続く、頬の内側に噛み跡が付く、口を大きく開けにくいと感じるといった変化がサインです。下唇にしびれた感じが出た場合は、すぐに受診が必要です。これは嚢胞が神経を圧迫している可能性を示します。次の定期検診まで待たず、症状に気づいた時点で連絡してください。観察とは変化を見逃さないための積極的な行動であり、何もしないことではありません。
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7. 20代のうちが抜きやすい理由
抜歯を決めているなら、20代前半から30代前半までに実施する方が体への負担は小さく済みます。この時期が適している理由は、顎の骨がまだ柔らかく、歯の根と骨の癒着が進んでいないためです。年齢が上がるにつれて骨は緻密になり、歯を脱臼させる際に必要な力と時間が増えます。処置時間が延びれば、術後の腫れや痛みも比例して大きくなります。加えて20代は組織の再生力が高く、抜歯窩の治癒が速い傾向にあります。実務での傾向として、20代の患者では腫れのピークが2日目に来て4日目には目立たなくなる一方、40代以降では引くまで1週間近くかかる例が増えます。よくある失敗パターンは、症状がないことを理由に先延ばしし、40代で強い痛みが出てから抜歯に踏み切るケースです。この段階では処置も回復も負担が大きくなります。就職前や転職の合間など、まとまった休みを取れる時期が実施の好機です。学生であれば長期休暇中が適しています。抜くと決めているなら、症状が出る前の健康な時期に予定を組むことが最も負担の少ない進め方になります。
| 年代 | 骨の状態 | 腫れが引く目安 |
|---|---|---|
| 20代 | 柔らかく弾力がある | 3〜4日程度 |
| 30代 | やや緻密化が進む | 4〜6日程度 |
| 40代以降 | 硬く癒着が生じやすい | 7日以上かかる例も |
骨の硬さが処置時間を左右する
若い時期の顎骨は弾力があり、器具を差し込んだときにわずかに歪みます。この歪みが歯を持ち上げる助けになります。年齢とともに骨は硬く密になり、同じ力をかけても動きが小さくなります。そのため骨を削る範囲を広げるか、歯を分割する回数を増やす必要が生じます。処置が長引くほど、麻酔の追加や術後の腫脹が増えます。30代前半までなら30分以内で終わる症例が多いという点は、時期を決める材料になります。
生活への影響が少ない時期の選び方
抜歯日を決める際は、翌日以降の予定を先に確認してください。腫れのピークは処置から48時間前後に来ます。プレゼンや面接、結婚式などの予定がある週は避けるのが賢明です。金曜に処置を受ければ、腫れの山を週末に重ねられます。ただし休診日には連絡が取りにくいため、緊急時の連絡方法を事前に確認しておいてください。抜歯後2日間は運動と飲酒を控える必要があるため、その点も予定に織り込んでおくと安心です。
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8. 東海市でCT診断を行う歯医者
下の親知らずが神経に近い症例では、歯科用CTを備えた医院を選ぶことが安全性に直結します。CTが必要となる理由は、平面のレントゲンでは判定できない神経管との立体的な位置関係を、断層画像で確認できるためです。歯科用CTは医科用と異なり、顎の限られた範囲だけを撮影します。そのため被曝線量は医科用CTと比べて大幅に少なく、撮影時間も20秒程度で終わります。得られる情報は、神経管が根の頬側にあるか舌側にあるか、根と神経管の間に骨の層が残っているか、根が神経管を抱え込んでいないかという3点です。この情報があれば、歯を分割する方向と順序を事前に決められます。東海市およびその周辺で医院を探す際は、ホームページで歯科用CTの設置を確認するのが確実です。設置がない医院でも、必要と判断した場合は近隣の口腔外科や大学病院へ紹介する体制が整っています。よくある失敗は、CTが必要な症例かどうかを確認しないまま抜歯へ進むことです。初診時に「神経との距離はどうですか」と一言尋ねるだけで、必要な検査の有無がはっきりします。難症例と判断された場合は、紹介状を受け取って専門機関で処置を受ける流れが安全です。
CT画像で判明する三つの情報
CTの断層画像では、顎を輪切りにした状態で内部構造を確認できます。まず神経管の走行位置が特定でき、根との水平距離をミリ単位で計測できます。次に根の形態が立体的に把握でき、湾曲や癒着の有無が分かります。根が神経管をまたぐ形で伸びている症例も、事前に発見できます。この場合は歯を複数に分割して段階的に取り出す方針が採られます。計画が立てば処置時間は短縮できますので、結果として負担も軽くなります。
医院選びで確認しておきたい点
医院を選ぶ際は、設備だけでなく説明の丁寧さも判断材料になります。撮影した画像を見せながら、抜歯の手順とリスクを説明してくれるかどうかを確認してください。質問に対して具体的な数字で答えてくれる医院は信頼できます。処置時間の見込み、腫れる期間、費用の概算を事前に聞いておくと不安が減ります。保険診療であれば、下の埋伏歯の抜歯は3割負担で数千円程度に収まるのが一般的です。CT撮影費用も保険適用となる場合が多く、事前に確認しておくと安心できます。

9. 抜歯後に起きる腫れの目安
下の埋伏した親知らずを抜いた後は、処置から48時間前後に腫れのピークが来ます。腫れが生じる理由は、骨を削り歯を分割する過程で組織が傷つき、修復のために血液成分が集まるためです。これは治癒に必要な反応であり、異常ではありません。経過の目安は、当日は麻酔が切れて鈍い痛みが出始め、2日目に頬の膨らみが最も目立ち、4日目から徐々に引いていくという流れです。1週間後の抜糸のころには外見上ほぼ分からなくなります。痛み止めは痛くなってからではなく、麻酔が切れる前に飲む方が効果的です。処方された抗菌薬は指示された日数を飲み切ってください。冷やす場合は保冷剤をタオルで包み、当日のみ短時間の使用にとどめます。よくある失敗パターンは、氷を長時間当て続けて血流を過度に妨げるケースです。これは治癒を遅らせます。また、傷口が気になって舌で触れたり、強くうがいをしたりする行為は避けてください。血の塊が取れると強い痛みが数日続くドライソケットという状態になります。抜歯当日は湯船に浸からずシャワーで済ませることも、腫れを抑える実際的な工夫です。
日ごとの経過と過ごし方
抜歯当日は安静を優先し、食事は反対側で噛める柔らかいものを選びます。おかゆやうどん、ヨーグルトが適しています。2日目は腫れが強まりますが、痛み止めで対応できる範囲です。3日目以降は温めて血流を促す方が回復を助けます。喫煙は治癒を明確に遅らせるため、最低でも3日は控えてください。歯磨きは傷口を避けて通常どおり行うのが正解で、口腔内を清潔に保つ方が感染を防げます。
受診が必要になる症状の見分け
通常の経過を外れる症状には、早めの対応が必要です。処置から4日以上たっても痛みが強まる場合、38度以上の発熱が続く場合、出血が止まらない場合は連絡してください。下唇やあごのしびれが翌日以降も続くときも報告が必要です。多くは一時的なものですが、経過の記録が対応の助けになります。判断に迷ったら、我慢せず電話で相談するのが確実です。連絡先を抜歯前に控えておくことが、いざというときの安心につながります。
10. 残すか抜くかは個別に決まる
親知らずの扱いに一律の正解はなく、4本それぞれの生え方と口腔内の状況によって結論が変わります。個別判断が必要な理由は、同じ人の口の中でも右と左、上と下で角度も深さも異なるためです。判断に用いる材料は5つあります。生え方の角度、清掃が可能かどうか、隣接歯への影響、神経との距離、そして本人の年齢と全身状態です。この5点を照らし合わせて、抜歯の利益とリスクを比較します。2026年現在、多くの歯科医院ではレントゲン画像を患者と一緒に見ながら方針を決める流れが定着しています。実務での傾向として、説明を受けた上で自分の状態を理解した方は、術後の管理も丁寧に行える傾向があります。よくある失敗は、周囲の体験談だけで判断してしまうことです。友人が簡単に抜けたからといって、自分も同じとは限りません。他人の経験は参考にはなっても判断材料にはなりません。まずはパノラマレントゲンを撮影し、自分の4本がどの状態にあるかを把握してください。その上で、抜く歯・残す歯・観察する歯を分けて計画を立てることが、最も無駄のない進め方になります。
判断に使う五つの材料
5つの材料のうち、優先順位が高いのは清掃性と隣接歯への影響です。磨けない歯は虫歯と歯周炎の起点になり、隣の歯を巻き込みます。次に神経との距離が処置方法を左右します。年齢は実施時期の判断に関わり、全身状態は可否そのものを決めます。この順で確認していくと、結論に迷いが生じにくくなります。診察時にはこの5点について、それぞれどう評価されたかを聞いてみてください。項目ごとに確認すれば説明の理解度が上がります。
相談時に伝えるべき情報
受診時には、こちらから伝える情報が判断の精度を高めます。過去に腫れた回数と時期、現在服用中の薬、持病の有無、麻酔で気分が悪くなった経験の有無です。妊娠の可能性がある場合は必ず申告してください。レントゲン撮影や薬の処方に関わります。加えて、抜歯できる日程の候補を2つか3つ用意しておくと予約がスムーズです。お薬手帳と保険証を持参し、質問をメモにして持ち込むことで、限られた診察時間を有効に使えます。
自分の一本を見極めるための行動指針
親知らずを抜くかどうかは、痛みの有無ではなく生え方と清掃性で決まります。まっすぐ生えて磨ける歯は残す価値があり、斜めや半埋伏で腫れを繰り返す歯は抜歯の対象になります。判断の前提となるのは画像による正確な把握です。まずはレントゲンで4本の状態を確認し、必要に応じてCTで神経との距離を測ってください。その上で、抜く・残す・観察するの三択を歯ごとに決めていく流れが合理的です。
親知らずの抜歯に関するよくある質問
痛くない親知らずも抜いたほうがよいですか
A. 痛みの有無ではなく生え方で判断します。
まっすぐ生えて磨ける歯は残せます。斜めや半分埋まった状態で汚れが溜まる歯は、症状がなくても抜歯対象になります。
抜歯後の腫れはどのくらい続きますか
A. 48時間前後がピークで、4日目から引き始めます。
20代なら3〜4日、40代以降は1週間程度かかる場合があります。1週間後の抜糸のころには目立たなくなります。
CT撮影は必ず受ける必要がありますか
A. 神経に近い症例のみ必要です。
パノラマで根と神経管が重なって見える場合に撮影します。離れていれば通常のレントゲンだけで抜歯へ進めます。
腫れているときに抜いてもらえますか
A. 急性炎症中の抜歯は原則行いません。
麻酔が効きにくく感染リスクも上がるためです。まず消炎処置を行い、1〜2週間後に抜歯日を設定します。

執筆者
内藤洋平
丘の上歯科醫院 院長
平成16年:愛知学院大学(歯)卒業
IDA(国際デンタルアカデミー)インプラントコース会員
OSG(大山矯正歯科)矯正コース会員
YAGレーザー研究会会員

























