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歯科コラム

顎関節症の悩み、どの歯医者に行けばいい?症状・原因・治療法を解説

その顎の痛み、放置しないで。専門家が解き明かす顎関節症の全貌

「食事のたびに顎が痛む」「大きく口を開けられない」「顎を動かすとカクカク、ジャリジャリと不快な音がする」。このような症状に悩まされながらも、どこに相談すれば良いのかわからず、我慢を続けている方はいらっしゃらないでしょうか。その不調は、「顎関節症(がくかんせつしょう)」かもしれません。顎関節症は、成人の約半数が何らかの症状を経験したことがあるとも言われるほど、決して珍しくない疾患です。

しかし、その原因は一つではなく、噛み合わせの問題、ストレス、生活習慣など、様々な要因が複雑に絡み合って発症するため、自己判断で放置してしまうと症状が悪化し、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。この記事では、顎関節症に関する包括的な情報を提供することを目的としています。顎関節症とは一体どのような病気なのか、その代表的な症状から、痛みが引き起こされるメカニズム、知らず知らずのうちに行っているかもしれない症状を悪化させる癖まで、一つひとつ丁寧に掘り下げていきます。

さらに、歯科医院ではどのような検査や診断が行われるのか、そしてマウスピースを用いたスプリント療法や理学療法といった専門的な治療法の内容と効果についても詳しく解説します。受診先に迷った際の指針や、ご自身でできるセルフケアの方法も紹介し、読者の皆様が抱える不安や疑問を解消するための一助となることを目指します。

 


目次

1. 顎関節症の3大症状とは
2. なぜ顎が痛くなる?主な原因
3. 日常生活に潜む悪化させる癖
4. 歯医者で行う検査と診断
5. スプリント療法(マウスピース)の効果
6. 開口訓練やマッサージなどの理学療法
7. 薬物療法や外科的治療が必要な場合
8. 何科を受診すべきか迷ったら
9. セルフケアで症状を緩和する方法
10. 専門の歯医者を見つけて相談しよう


 

1. 顎関節症の3大症状とは

顎関節症は、単一の病気ではなく、顎関節やその周辺の咀嚼筋(そしゃくきん)に何らかの異常が生じることで引き起こされる様々な症状の総称です。その症状の現れ方は多岐にわたりますが、特に代表的とされるのが「顎関節や咀嚼筋の痛み」「関節雑音(かんせつざつおん)」「開口障害・運動異常」であり、これらは顎関節症の三大症状と呼ばれています。これらの症状は、一つだけが現れることもあれば、複数が組み合わさって現れることもあり、症状の強さも個人差が大きいのが特徴です。

顎関節や咀嚼筋の痛み (疼痛)

顎関節症における最も代表的で、多くの方が医療機関を受診するきっかけとなるのが「痛み」です。痛みを感じる部位は、耳の前あたりにある顎関節そのもの、あるいは、こめかみや頬、えらの部分に広がる咀嚼筋です。この痛みは、口を開けたり閉じたり、食べ物を噛んだりといった顎を動かす動作に伴って強くなる「運動時痛」が典型的です。

安静にしている時には痛みがないか、あっても軽い鈍痛程度なのに、食事や会話といった日常的な動作で鋭い痛みを感じるため、生活の質(QOL)を著しく低下させる原因となります。症状が進行すると、顎を動かしていない時にも持続的な痛みを感じる「自発痛」が現れることもあります。また、関連痛として、頭痛や首、肩のこり、耳の痛みなどを併発するケースも少なくありません。

関節雑音 (クリック音・ジャリジャリ音)

顎を動かした際に「カクッ」「コキッ」といった音が鳴る症状を、関節雑音(クリック音)と呼びます。これは、顎関節の内部でクッションの役割を果たしている「関節円板」という軟骨組織が、本来の位置からずれてしまうことによって生じます。口を開ける途中でずれていた関節円板が元の位置に戻る瞬間や、口を閉じる際に再びずれる瞬間に音が発生するのです。多くの場合は痛みを伴わず、音だけがする状態ですが、これを放置すると症状が進行し、痛みや開口障害につながる可能性があります。

一方、「ジャリジャリ」「ミシミシ」といった、砂を踏むような軋轢音(あつれきおん)はクレピタス音と呼ばれます。これは、関節円板のずれが長期化したり、変形が進行したりすることで、関節を構成する骨同士が直接こすれ合って生じる音です。クレピタス音は、関節の変性が進んでいる可能性を示唆するサインであり、より注意深い診断と治療が必要となります。

開口障害・運動異常

「口が以前のように大きく開かなくなった」という症状は、開口障害と呼ばれます。正常な状態では、縦に指が3本分(約40mm~50mm)程度入るのが一般的ですが、顎関節症が進行すると指が2本分も入らないほど口が開けにくくなります。これは、関節円板がずれたまま元の位置に戻らなくなる「クローズドロック」という状態や、咀嚼筋の強い緊張や炎症によって筋肉が正常に伸びなくなることが原因で起こります。突然口が開かなくなることもあれば、徐々に開きにくくなることもあります。

また、口をまっすぐに開け閉めできず、途中でカクカクと引っかかったり、左右どちらかに顎が蛇行したりする「運動異常」も特徴的な症状の一つです。これらの症状は、食事や会話、あくびといった日常動作に直接的な困難をもたらすため、患者さんにとって非常に深刻な問題となります。

 

 

2. なぜ顎が痛くなる?主な原因

顎関節症の痛みや機能障害は、単一の原因によって引き起こされることは稀であり、複数の要因が複雑に絡み合って発症する「多因子疾患」であると考えられています。原因は大きく、顎関節や咀嚼筋そのものに直接影響を与える「構造的・機能的要因」と、症状の発現や悪化の引き金となる「環境的・心理的要因」に分類することができます。ご自身の生活習慣や環境を振り返り、どの要因が関わっているかを考えることが、適切な治療への第一歩となります。

噛み合わせの異常と顎への負担

従来、顎関節症の主な原因と考えられてきたのが、上下の歯の接触状態、すなわち「噛み合わせ(咬合)」の異常です。例えば、歯並びが悪い、一部の歯が抜けたまま放置されている、高さの合わない被せ物や入れ歯を使用している、といった状態は、顎の位置を不安定にし、特定の歯や顎関節に過剰な負担を集中させる原因となります。

噛み合わせがずれていると、咀嚼の際に顎が不自然な動きを強いられ、顎関節内の関節円板がずれやすくなったり、咀嚼筋が異常に緊張したりします。これにより、痛みや開口障害が引き起こされるのです。ただし、近年の研究では、噛み合わせの異常が必ずしも顎関節症の直接的な原因になるわけではなく、数あるリスク因子の一つであるという見方が主流になっています。

ストレスや不安による筋肉の緊張

精神的なストレスや不安、緊張は、自律神経のバランスを乱し、全身の筋肉をこわばらせる作用があります。特に、顔や顎周りの筋肉はストレスの影響を受けやすく、無意識のうちに歯を食いしばったり、夜間に歯ぎしりをしたりする行動(ブラキシズム)を引き起こすことが知られています。

通常、上下の歯が接触している時間は1日20分程度と言われていますが、ストレス下に置かれると、この接触時間が大幅に長くなり、咀嚼筋や顎関節に持続的な負荷がかかり続けます。この過剰な負荷が筋肉の疲労や血行不良を招き、痛み物質を産生させることで、顎の痛みやこわばりを引き起こすのです。現代社会において、ストレスは顎関節症の最大の誘因の一つと考えられています。

歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)

ブラキシズムは、睡眠中や日中に無意識に行われる歯のすり合わせや食いしばりの総称です。睡眠中の歯ぎしり(グラインディング)では、時に体重以上の非常に強い力が歯や顎関節にかかると言われています。また、日中に集中している時や緊張している時に、上下の歯をぐっと噛みしめる癖(クレンチング)や、ただ軽く接触させ続ける癖(TCH: Tooth Contacting Habit)も、顎にとっては大きな負担となります。

これらの癖は、咀嚼筋を常に緊張状態に置き、筋肉内に疲労物質を蓄積させます。さらに、顎関節の関節円板や靭帯にも過剰な圧力を加え続け、組織の損傷や変性を引き起こす可能性があります。自覚がないまま行われていることが多いため、顎関節症の隠れた根本原因となっているケースが非常に多いのが特徴です。

 

 

3. 日常生活に潜む悪化させる癖

顎関節症の症状は、日常生活の中に潜む何気ない癖や習慣によって、知らず知らずのうちに誘発されたり、悪化したりすることがあります。これらの癖は、顎関節や咀嚼筋に不必要かつ持続的な負担をかける行為です。症状の改善を目指す上で、まずはご自身の生活習慣を見直し、これらの悪癖を認識し、意識的に改善していくことが極めて重要となります。

TCH(歯列接触癖)とは

TCH(Tooth Contacting Habit)とは、日本語で「歯列接触癖」と訳され、食事や会話の時以外に、無意識に上下の歯を「持続的に」接触させてしまう癖のことを指します。多くの人は、リラックスしている時、唇は閉じていても上下の歯の間には1~3mm程度のわずかな隙間(安静空隙)があり、歯は接触していません。

しかし、TCHの癖がある人は、集中している時やスマートフォンを操作している時、ストレスを感じている時などに、軽くではあっても上下の歯を接触させ続けてしまいます。たとえ噛みしめるほどの強い力でなくても、持続的に歯が接触しているだけで、咀嚼筋は常に緊張を強いられ、顎関節にも負荷がかかり続けます。この微弱で持続的な負荷が、筋肉の疲労や血行障害を引き起こし、顎の痛みやこり、だるさの大きな原因となるのです。ご自身の癖に気づくために、家の中や職場の目につく場所に「歯を離す」と書いた付箋を貼るなどの工夫が有効です.

片側だけで噛む癖(偏咀嚼)

食事の際に、いつも同じ側の歯ばかりで噛む癖を「偏咀嚼(へんそしゃく)」と言います。虫歯や歯周病で片側の歯が痛むために無意識に避けていたり、歯並びの問題で片側の方が噛みやすかったりすることが原因で起こります。片側だけで噛む習慣が続くと、頻繁に使われる側の咀嚼筋は過度に発達し、常に緊張した状態になります。

一方で、使われない側の筋肉は衰えていきます。この左右の筋肉のアンバランスが、顎の動きを歪ませ、顎関節の位置を不安定にさせる原因となります。結果として、頻繁に使う側の顎関節に過剰な負担が集中し、関節円板のずれや関節の炎症、痛みを引き起こすリスクが高まります。バランス良く両方の歯で噛むことを意識することが、顎の健康を保つ上で重要です。

頬杖、うつ伏せ寝、猫背などの不良姿勢

頬杖は、片方の顎に持続的な外力を加える行為であり、顎関節を不自然な位置に押し込んでしまいます。これを習慣的に行うと、顎関節の正常な位置関係が崩れ、関節円板のずれや靭帯の損傷を引き起こす直接的な原因となります。同様に、うつ伏せで寝ることも、長時間にわたって顎や首にねじれの力を加えることになり、顎関節に大きな負担をかけます。

また、猫背などの悪い姿勢も顎関節症と深く関連しています。背中が丸まると、バランスを取るために頭が前方に突き出た姿勢になります。この頭の位置を支えるために、首や肩、そして顎周りの筋肉が常に緊張を強いられることになります。この持続的な筋緊張が咀嚼筋の疲労や痛みを引き起こし、顎関節症の症状を悪化させる一因となるのです。デスクワーク中やスマートフォンの操作中は特に姿勢が悪くなりがちなので、意識的に背筋を伸ばし、正しい姿勢を保つことが大切です。

 


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4. 歯医者で行う検査と診断

顎関節症の疑いで歯科医院を受診した場合、正確な診断を下し、適切な治療計画を立案するために、多角的な検査が行われます。問診によって患者さんの訴えを詳細に把握することから始まり、視診、触診、そして必要に応じて画像検査などを組み合わせて、症状の原因を慎重に探っていきます。診断は、日本顎関節学会が定めた診断基準などに基づいて、客観的な所見を統合して行われます。

問診と視診・触診

検査の第一歩は、丁寧な問診です。いつから、どのような症状があるのか(痛み、関節音、開口障害など)、症状はどのような時に強くなるのか、過去の治療歴や外傷の有無、ストレスの状況、そして前述したような日常生活上の癖の有無などを詳しく聞き取ります。これらの情報は、症状の原因を推測する上で非常に重要な手がかりとなります。

次に、視診では、顔の左右の非対称性、顎の動き(まっすぐ開くか、蛇行するか)、開口量(口がどのくらい開くか)などを客観的に評価します。開口量は定規などを用いてミリメートル単位で正確に測定されます。

そして、診断において極めて重要なのが触診です。術者が直接、患者さんの顎関節部(耳の前あたり)や咀嚼筋(こめかみ、頬、えらなど)に触れ、圧痛(押した時の痛み)の有無やその程度を確認します。また、顎を動かしてもらいながら関節部に指を当て、関節雑音の性質(クリック音かクレピタス音か)や関節の動きの滑らかさを評価します。

レントゲン(パノラマ・CT)検査

顎関節やその周辺の骨の状態を評価するために、画像検査が行われます。一般的にまず撮影されるのが、パノラマエックス線写真です。これは、上下の顎全体を一枚の画像として撮影する方法で、顎関節を構成する下顎頭(かがくとう)や下顎窩(かがくか)の骨の形態、変形の有無、左右差などを大まかに把握することができます。

しかし、パノラマエックス線写真は二次元的な画像であるため、骨の詳細な立体構造を評価するには限界があります。そこで、より精密な診断が必要な場合には、歯科用CT(コーンビームCT)検査が用いられます。CT検査では、骨を三次元的に、かつ断層像として詳細に観察することができるため、骨の吸収や添加、骨棘(こつきょく)の形成といった顎関節の変形性疾患(変形性顎関節症)の診断に極めて有用です。

MRI検査の必要性とわかること

レントゲンやCTが骨の形態を評価するのに適しているのに対し、MRI検査は、関節円板や靭帯、筋肉といった軟組織の状態を詳細に描出することに優れています。顎関節症の診断においてMRI検査が特に重要となるのは、関節円板の位置や形態を正確に評価できる点です。関節円板が正常な位置からどの程度、どの方向にずれているのか(関節円板前方転位など)、そして口を開けた時にそのずれが元に戻るのか(復位性)、戻らないのか(非復位性)を明確に診断することができます。

また、関節内に水が溜まっている状態(関節水腫)の有無も確認でき、これは関節に炎症が起きていることを示唆する重要な所見です。これらの情報は、治療方針を決定する上で不可欠であり、特にスプリント療法の種類を選択したり、外科的治療の適応を判断したりする際に重要な役割を果たします。全ての症例でMRI検査が必要となるわけではありませんが、保存的治療で症状が改善しない場合や、重度の開口障害が見られる場合などには、実施が強く推奨されます。

 

5. スプリント療法(マウスピース)の効果

スプリント療法は、顎関節症の治療法として世界的に広く行われている代表的な保存療法の一つです。患者さん一人ひとりの歯型に合わせて作製された、プラスチック製のマウスピース(スプリント)を主に就寝中に装着することで、顎関節や咀嚼筋への負担を軽減し、症状の緩和を図ります。スプリントには様々な種類があり、症状や原因に応じて適切なタイプを選択することが治療成功の鍵となります。

スプリントの役割と目的

スプリントを装着する主な目的は、複数あります。第一に、睡眠中の歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)による過剰な力から、歯や顎関節、咀嚼筋を保護することです。スプリントが介在することで、上下の歯が直接強く接触するのを防ぎ、破壊的な力が分散・緩和されます。

第二に、噛み合わせの高さをわずかに挙上し、下顎の位置を安定させることで、顎関節をリラックスした状態に導く効果があります。これにより、緊張した咀嚼筋が弛緩し、筋肉の痛みやこわばりが軽減されます。

第三に、ずれてしまった関節円板が元の位置に戻りやすい環境を整えたり、関節にかかる負担を軽減して炎症を鎮めたりする効果も期待できます。スプリントは単に歯を保護するだけでなく、顎関節と咀嚼筋、そして神経系を含めた顎口腔系全体の調和を取り戻すための治療装置なのです。

スタビライゼーションスプリントとは

スタビライゼーションスプリント(咬合安定化スプリント)は、顎関節症の治療で最も一般的に用いられるタイプのスプリントです。主に上の歯列全体を覆うように作製され、下の歯と接触する面は平坦で滑らかになっています。このスプリントを装着すると、下の顎は特定の歯にガイドされることなく、自由に、かつ最も筋肉がリラックスできる位置で安定します。

これにより、特定の歯や顎関節にかかっていた負担が均等に分散され、咀嚼筋の過緊張が緩和されます。特に、筋肉の痛み(筋痛)が主症状である筋・筋膜性疼痛タイプの顎関節症や、歯ぎしり・食いしばりによる症状の緩和に高い効果を発揮します。歯科医師による定期的な調整が不可欠であり、噛み合わせの状態をチェックしながら、スプリントの接触状態を最適化していくことが重要です。

その他のスプリントの種類と選択基準

スタビライゼーションスプリント以外にも、症状や目的に応じて様々な種類のスプリントが存在します。例えば、リポジショニングスプリント(前方整位スプリント)は、前方にずれてしまった関節円板を、一時的に正常な位置関係に戻すことを目的として設計されます。下の顎を意図的に前方の位置に誘導するような形態をしており、主にクリック音が著しい場合や、関節円板のずれに起因する開口障害(クローズドロック)の初期段階で用いられることがあります。

ただし、長期的な使用は噛み合わせを変化させてしまうリスクがあるため、適応は慎重に判断されます。その他にも、リラクセーションスプリントやピボットスプリントなど、特定の目的を持つスプリントがあります。どの種類のスプリントを選択するかは、問診や触診、画像検査などによる正確な診断に基づき、患者さんの症状(痛み、関節音、開口障害の有無)、原因、そして顎関節の状態を総合的に評価した上で、専門的な知識を持つ歯科医師によって決定されます。自己判断で市販のマウスピースを使用することは、症状を悪化させる危険性があるため、必ず専門医の診断を受けるようにしてください。

 

 

6. 開口訓練やマッサージなどの理学療法

顎関節症の治療において、スプリント療法や薬物療法と並行して重要な役割を担うのが、理学療法です。理学療法には、硬くなった筋肉をほぐし、関節の動きを改善するための様々なアプローチが含まれます。特に、患者さん自身が主体的に取り組むことができる開口訓練やセルフマッサージは、症状の改善と再発予防に非常に効果的です。専門家の指導のもとで正しい方法を学び、日常生活に継続的に取り入れることが重要です。

顎関節と咀嚼筋のストレッチ

顎関節症によって緊張し、硬くなった咀嚼筋を和らげるためには、ストレッチが有効です。代表的な筋肉は、頬にある咬筋(こうきん)と、こめかみにある側頭筋(そくとうきん)です。咬筋のマッサージは、人差し指や中指を頬骨の下あたりに当て、少し痛みを感じる程度の力でゆっくりと円を描くようにほぐします。側頭筋のマッサージも同様に、こめかみの部分を指で優しく揉みほぐします。これらのマッサージは、筋肉の血行を促進し、痛みやこわばりを緩和する効果があります。

また、口をゆっくりと、痛みのない範囲で最大限に開け、その状態を数秒間キープするストレッチも、関節の可動域を広げるのに役立ちます。重要なのは、決して無理をせず、痛みを感じる手前の「気持ち良い」と感じる範囲で行うことです。入浴中など、筋肉が温まっている時に行うとより効果的です。

開口訓練と可動域改善エクササイズ

開口障害、つまり口が開きにくい症状がある場合には、関節の可動域を改善するための積極的なエクササイズ(開口訓練)が必要となります。ただし、自己流で行うと症状を悪化させる危険があるため、必ず歯科医師や理学療法士の指導のもとで開始してください。一般的な方法としては、まず、痛みの出ない範囲で最大限に口を開けます。次に、親指と人差し指を上下の歯にかけ、ゆっくりと愛護的に、さらに口が開くように補助的な力を加えます。この状態を数秒から数十秒間維持し、ゆっくりと元の位置に戻します。

これを1日数回、セットで行います。この訓練は、短縮してしまった筋肉や関節周囲の組織を徐々に引き伸ばし、関節の動きを滑らかにすることを目的としています。また、下顎をゆっくりと前後、左右に動かす運動も、顎の協調性を高め、正常な運動パターンを再学習させる上で有効です。

物理療法(温熱療法・低周波治療など)

歯科医院や専門の医療機関では、セルフケアに加えて、専門的な機器を用いた物理療法が行われることもあります。温熱療法は、ホットパックや赤外線などを用いて患部を温める治療法です。血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減させる効果があります。特に、慢性的な筋肉の痛みに有効です。

逆に、急性の強い炎症や痛みがある場合には、一時的に冷却するアイシングが選択されることもあります。また、低周波治療(TENS)は、皮膚の表面から微弱な電気刺激を筋肉や神経に与えることで、筋肉をリラックスさせたり、痛みの感覚を伝える神経の働きをブロックしたりする効果が期待できます。これらの物理療法は、他の治療法と組み合わせることで相乗効果を発揮し、より効果的な症状の緩和につながることがあります。

 


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7. 薬物療法や外科的治療が必要な場合

顎関節症の治療は、スプリント療法や理学療法、生活習慣の改善といった「保存療法」が第一選択となります。多くの患者さんはこれらの保存療法によって症状が改善しますが、痛みが非常に強い場合や、保存療法だけでは十分な効果が得られない難治性の症例においては、薬物療法や外科的治療が検討されることがあります。これらの治療は、あくまで保存療法を補完する、あるいは最終的な選択肢として位置づけられます。

痛みを和らげるための薬物療法

症状の中でも特に「痛み」が強く、日常生活に大きな支障をきたしている場合には、痛みをコントロールするために薬物療法が用いられます。最も一般的に処方されるのは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)です。ロキソプロフェンやジクロフェナクといった薬が代表的で、炎症を抑え、痛みを緩和する効果(鎮痛・消炎作用)があります。これらは主に、顎関節や咀嚼筋に急性の炎症が起きている場合に有効です。

また、筋肉の過度な緊張が痛みの主因である場合には、筋弛緩薬が処方されることもあります。筋弛緩薬は、中枢神経に作用して筋肉のこわばりを和らげ、痛みの悪循環を断ち切ることを目的とします。さらに、痛みが慢性化し、不安や抑うつ気分などの心理的要因が強く関わっていると判断された場合には、抗うつ薬や抗不安薬が有効なケースもあります。これらの薬は、痛みをコントロールする脳内の神経伝達物質に作用することで、鎮痛効果を発揮します。

関節腔内洗浄療法やパンピングマニピュレーション

保存療法で改善が見られない開口障害、特にずれた関節円板が元に戻らないクローズドロックの状態が続いている場合などには、より侵襲的な治療が検討されます。関節腔内洗浄療法は、局所麻酔下で顎関節の関節腔(関節の上方の隙間)に2本の注射針を刺し、一方から生理食塩水などを注入し、もう一方から排出させることで、関節内を洗い流す治療法です。

これにより、関節内の炎症性物質や癒着を引き起こす物質が除去され、関節円板の動きが滑らかになり、痛みや開口障害の改善が期待できます。この洗浄療法と同時に、術者が徒手的に下顎を操作して固まった関節を動かす手技(パンピングマニピュレーション)を併用することもあります。これにより、関節円板の動きを妨げている癒着を剥がし、可動域を回復させる効果を高めます。

外科的治療(関節鏡視下手術など)の適応

様々な保存療法や低侵襲的な治療を行っても症状が改善せず、画像検査で明らかな器質的変化(関節円板の重度の変形や穿孔、骨の著しい変形など)が確認され、機能障害が著しい場合には、最終的な手段として外科的治療が選択されることがあります。代表的な手術には、関節鏡視下手術(顎関節鏡手術)があります。

これは、耳の前の皮膚を小さく切開し、直径2mm程度の細い内視鏡(関節鏡)を関節内に挿入して、モニターで内部を観察しながら行う手術です。関節内の癒着を剥がしたり、ずれた関節円板を整復・固定したり、変形した組織を切除したりすることが可能です。皮膚の切開が小さく、患者さんへの負担が少ないのが利点です。さらに重度の症例、例えば関節の破壊が著しい場合などには、関節を切開して直視下で手術を行う関節開放手術が必要となることもあります。外科的治療の適応は、そのリスクとベネフィットを十分に考慮し、極めて慎重に判断されるべきものです。

 

 

8. 何科を受診すべきか迷ったら

「顎が痛い」「口が開けにくい」といった症状が現れた時、多くの人がまず悩むのが「一体、何科の病院に行けば良いのだろうか?」という問題です。顎の症状は、耳や鼻、あるいは首の骨など、隣接する他の器官の病気と症状が似ている場合もあり、受診先に迷うのは当然のことです。しかし、顎関節症を適切に診断し、専門的な治療を受けるためには、正しい診療科を選択することが非常に重要です。

まずは歯科・口腔外科へ相談を

顎関節症の症状を疑った場合、第一に受診を検討すべき診療科は「歯科」または「口腔外科」です。歯科医師は、歯や歯周組織だけでなく、顎、舌、口腔粘膜など、口とその周辺領域(顎口腔領域)の病気を専門としています。特に顎関節症は、噛み合わせの問題や歯ぎしりなど、口の中の状態と密接に関連していることが多いため、歯科医師による診査・診断が不可欠です。

一般的な歯科医院でも初期対応は可能ですが、より専門的な診断や治療が必要なケースも多いため、「顎関節症の治療」や「口腔外科」を標榜している歯科医院を選ぶと、よりスムーズに適切な治療を受けられる可能性が高まります。大学病院や総合病院の口腔外科は、CTやMRIなどの高度な画像診断設備を備え、難治性の症例や外科的治療が必要な症例にも対応できる体制が整っています。

耳鼻咽喉科や整形外科との鑑別診断

顎の痛みは、必ずしも顎関節症が原因とは限りません。他の病気が原因で、似たような症状が現れることがあるため、鑑別診断が重要になります。例えば、耳の前が痛むという症状は、中耳炎や外耳炎といった耳の病気でも起こり得ます。また、唾液を作る耳下腺の炎症(耳下腺炎)や唾石症でも、顎のあたりが腫れて痛むことがあります。これらの病気が疑われる場合は、「耳鼻咽喉科」での診察が必要となります。

一方、事故や転倒などで顎を強く打った後に痛みが出た場合や、首や肩のこりがひどく、それが原因で顎の痛み(関連痛)が起きている可能性がある場合は、「整形外科」の領域となります。しかし、これらの症状が本当に顎関節以外に原因があるのかを自己判断するのは困難です。まずは歯科・口腔外科を受診し、そこで顎関節症以外の病気が疑われた場合に、適切な診療科を紹介してもらうのが最も確実な方法と言えるでしょう。

専門医の見つけ方と受診のポイント

より専門性の高い治療を求める場合、「日本顎関節学会」のウェブサイトなどを参考に、認定された専門医や指導医を探すという方法があります。これらの専門医は、顎関節症に関する深い知識と豊富な臨床経験を有しており、より的確な診断と治療を期待できます。受診する際には、事前にご自身の症状を整理しておくことが大切です。

いつから、どんな症状が、どのような時に、どのくらいの強さで出るのか、そして思い当たる原因や癖、過去の治療歴などをメモにまとめておくと、問診がスムーズに進み、医師も的確な診断をしやすくなります。また、治療は一度で終わることは少なく、経過を追いながら継続的に行う必要があるため、ご自身が通いやすく、信頼して相談できると感じる医師を見つけることが、治療を成功させるための重要な要素となります。

 

9. セルフケアで症状を緩和する方法

顎関節症の治療において、歯科医院での専門的な治療と同じくらい重要なのが、患者さん自身が日常生活の中で行う「セルフケア」です。顎関節や咀嚼筋に過度な負担をかける要因を日常生活から取り除き、症状を緩和・安定させるための工夫を継続的に行うことが、根本的な改善と再発予防につながります。専門家の指導を受けながら、積極的にセルフケアに取り組みましょう。

顎に負担をかけない食事の工夫

食事は毎日行う行為であり、その際の顎への負担は決して小さくありません。顎に痛みや違和感がある時は、意識的に顎を休ませるための食事の工夫が必要です。まず、硬い食べ物(せんべい、ナッツ、フランスパン、硬い肉など)や、ガムのように長時間噛み続ける必要のある食べ物は避けるようにしましょう。食べ物は、一口のサイズを小さくし、ゆっくりと時間をかけて、左右の歯で均等に噛むことを心がけてください。片側だけで噛む癖は、顎への負担を偏らせる大きな原因となります。

症状が強い時期には、おかゆやスープ、ヨーグルト、豆腐、よく煮込んだうどんなど、あまり咀嚼を必要としない、柔らかい食事を中心にするのが望ましいです。調理の際も、食材を細かく切ったり、柔らかく煮込んだりといった工夫で、顎への負担を大幅に減らすことができます。

症状に応じた冷却・温熱療法

痛みの性質に応じて、患部を冷やす(冷却)か温める(温熱)かを選択することは、症状緩和に有効なセルフケアです。顎をぶつけたり、急に強い痛みが出たりした場合など、急性期の炎症が疑われる時には、冷却が効果的です。保冷剤や氷嚢をタオルで包み、痛みのある部分に10分程度当てることで、血管を収縮させ、炎症や腫れ、痛みを和らげることができます。

ただし、長時間冷やしすぎると血行不良を招くため注意が必要です。一方、慢性的な鈍い痛みや筋肉のこわばりが続く場合には、温熱療法が適しています。蒸しタオルやホットパックなどを痛みやこりのある部分(頬やこめかみ)に10~15分程度当てることで、血行が促進され、筋肉の緊張がほぐれて痛みが緩和されます。入浴時に湯船に浸かりながら、顎の周りを優しくマッサージするのも良いでしょう。どちらの方法が良いか迷う場合は、自己判断せず、かかりつけの歯科医師に相談してください。

ストレス管理とリラクゼーション

顎関節症の原因として、心理的ストレスが大きく関わっていることは広く知られています。ストレスは無意識のうちに食いしばりや歯ぎしりを引き起こし、咀嚼筋を緊張させます。したがって、症状を改善するためには、ストレスを上手に管理し、心身をリラックスさせる時間を作ることが不可欠です。自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。

例えば、ウォーキングやヨガなどの軽い運動、趣味に没頭する時間、アロマテラピー、ゆっくりと音楽を聴くことなどが挙げられます。また、意識的にリラックスする習慣として、深呼吸や瞑想も効果的です。特に就寝前は、日中の緊張を解きほぐす良い機会です。ぬるめのお風呂にゆっくり浸かったり、穏やかな音楽を聴いたりして、心と体をリラックスモードに切り替えることで、睡眠中の歯ぎしりの軽減にもつながります。

 


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10. 専門の歯医者を見つけて相談しよう

顎関節症の症状は多岐にわたり、その原因も一人ひとり異なります。だからこそ、その場しのぎの対症療法ではなく、ご自身の状態を的確に診断し、根本的な原因にアプローチしてくれる専門家を見つけることが、つらい症状から解放されるための最も確実な道筋です。不安を一人で抱え込まず、勇気を出して専門の歯科医師に相談することから始めましょう。

顎関節症治療の経験が豊富な歯科医院とは

顎関節症の治療を掲げる歯科医院は数多くありますが、その中でもより専門的なアプローチを期待できる医院にはいくつかの特徴があります。まず、診断に時間をかけ、問診や触診、各種検査を丁寧に行い、症状の原因を多角的に探ってくれることが挙げられます。

また、スプリント療法一辺倒ではなく、理学療法や生活習慣指導、セルフケアの方法などを組み合わせた、総合的な治療計画を提案してくれる医院は信頼できると言えるでしょう。日本顎関節学会や日本口腔外科学会などの専門学会に所属し、積極的に新しい知識や技術を学んでいる歯科医師かどうかも、一つの判断基準になります。ホームページなどで、顎関節症に対する治療方針や実績について詳しく説明している医院を探してみるのも良い方法です。

治療のゴールを共有し、二人三脚で進める

顎関節症の治療は、歯科医師が一方的に行うものではなく、患者さん自身が治療の主体となり、歯科医師と協力して進めていく「二人三脚」のプロセスです。そのためには、まず医師が患者さんの話を真摯に聞き、現在の症状や生活への影響、そして治療に対する希望や不安を十分に理解してくれることが前提となります。その上で、診断結果と治療計画について、なぜその治療が必要なのか、どのような効果が期待でき、どのくらいの期間がかかるのかを、専門用語を避け、分かりやすい言葉で説明してくれる医師を選びましょう。

そして、治療のゴール、つまり「どのような状態を目指すのか」を患者さんと医師の間で明確に共有することが重要です。信頼関係を築き、何でも相談できるパートナーとして、共に治療に取り組んでいける歯科医師を見つけることが、長期にわたる治療を成功に導く鍵となります。

 

 

顎関節症との向き合い方:正しい知識を力に変えて、快適な毎日を取り戻す

この記事では、顎関節症の三大症状から、その複雑な原因、歯科医院での専門的な検査・治療法、そして日常生活で実践できるセルフケアに至るまで、包括的な情報をお伝えしてきました。顎の痛みや不快な音、口の開けにくさといった症状は、食事や会話といった私たちの生活の根幹をなす活動に直接影響を及ぼし、その苦痛は計り知れないものがあります。

しかし、重要なのは、顎関節症は決して「治らない病気」ではないということです。その原因は一つではなく、噛み合わせ、ストレス、無意識の癖、姿勢など、様々な要因が絡み合っているからこそ、一つの解決策に固執するのではなく、多角的な視点から自分の状態を理解し、適切なアプローチを選択することが求められます。スプリント療法や理学療法といった専門的な治療はもちろん有効ですが、それと同時に、TCH(歯列接触癖)や頬杖といった日常の悪癖に気づき、それを改善していく地道な努力が、症状の根本的な改善には不可欠です。ストレスを上手にコントロールし、顎に優しい生活を心がけるセルフケアは、治療の効果を高め、再発を防ぐための強力な武器となります。

もし今、あなたが顎の不調に悩んでいるのなら、決して一人で抱え込まないでください。まずは勇気を出して、信頼できる歯科・口腔外科の門を叩いてみましょう。専門家による正確な診断と適切な指導を受けることが、解決への確かな第一歩です。正しい知識を力に変え、専門家と二人三脚で治療に取り組むことで、つらい症状から解放され、快適で健やかな毎日を取り戻すことは十分に可能なのです。

 


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