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院長:内藤 洋平

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歯科コラム

正しい情報で向き合う歯茎の後退問題

この記事でわかること
インターネット上に溢れる誤った「歯茎再生」情報と歯科医学的実態の決定的なギャップ
歯茎が下がる「歯肉退縮」を放置することで発生する知覚過敏や根面う蝕の深刻なリスク
CTG(結合組織移植術)をはじめとする、下がった歯茎を物理的に取り戻すための専門的治療選択肢

「鏡を見るたびに、以前より歯が長く見えるようになった気がする」「冷たいものが歯ぐきのキワに染みて辛い」といった悩みを抱えてはいませんか?歯茎が下がってしまう現象は「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」と呼ばれ、見た目の老化だけでなく、大切な歯を失う大きなリスクを孕んでいます。

しかし、ネット上には「自分で治せる」「このマッサージで歯茎が復活する」といった根拠のない情報も溢れており、何を信じれば良いか困惑している方も多いはずです。実際には、一度失われた歯ぐきの組織を元に戻すには、専門的な診断と適切な歯科治療が不可欠です。

ここでは、歯茎の後退問題に正しい情報で向き合うための知識を整理しました。ネット情報の嘘と真実、歯科医院を受診する前の準備、そしてCTG(結合組織移植術)といった最新の治療法までを詳しく解説します。あなたの笑顔を支える歯ぐきの健康を取り戻し、将来にわたって自分の歯を守り抜くための確かな一歩として、ぜひ活用してください。

目次

1. ネット情報と実際のギャップ

2. 歯科医に相談する前の準備

3. 症例写真の見方と注意点

4. 歯茎痩せは放置してはいけない

5. CTGを含む治療法の選択肢

6. 保険適用の範囲について知る

7. 自費診療との違いとメリット

8. 口腔内撮影で見る変化の記録

9. 治療後のメンテナンス方法

10. 信頼できる歯科医院の選び方

1. ネット情報と実際のギャップ

歯ぐきの悩みを抱えたとき、多くの方が「歯茎復活 戻す 方法」「歯茎 自分で治す」といったキーワードで検索をされるでしょう。しかし、そこで目にする情報の多くは、残念ながら医学的根拠に乏しいものが含まれています。「セルフケアで歯ぐきは再生しない」という厳しい現実を、まずは正しく受け入れることが治療への最短距離となります。

「塗るだけ・揉むだけ」で復活するという誤解

SNSや動画サイトで散見される「歯茎復活法」には、注意すべき点が多々あります。

  • 再生クリーム・ジェルの真実: 特定のジェルを塗るだけで歯ぐきが盛り上がることはありません。これらの多くは「炎症を抑える」あるいは「歯ぐきを引き締める」効果に留まり、失われた高さを物理的に戻す力はありません。
  • 自己流マッサージの危険性: 歯ぐきの血行を良くすることは大切ですが、間違った方向や強い力でマッサージをすると、摩擦によってかえって歯ぐきの退縮を加速させてしまう恐れがあります。
  • サプリメントの限界: コラーゲンやビタミンを摂取することは全身の健康には有益ですが、特定の部位の歯ぐきをピンポイントで再生させる魔法ではありません。

歯科医学的な「再生」と「改善」の定義

歯科医院で行うのは、一時的な誤魔化しではなく、構造的な改善です。

  • 物理的な組織の補充: 下がってしまった部分に他の場所から粘膜を移植したり(CTG)、人工的な膜(GTR法)を使ったりすることで、初めて物理的な体積を取り戻せます。
  • 原因の徹底排除: 歯ぐきが下がった原因(噛み合わせの強さ、歯周病、ブラッシング圧)を特定し、それを止めない限り、どんなに良い治療をしても再発します。
  • 期待値のコントロール: 骨まで大きく溶けている場合、100%元の高さに戻すことが難しいケースもあります。ネットの成功事例ばかりに目を向けず、自分の状態に基づいたリアルな診断が重要です。

ネット情報と歯科治療の比較

比較項目 インターネットの「通説」 歯科医院の「実態」
改善の主体 自宅でのマッサージや薬剤 外科的処置、または原因除去
効果の持続性 一時的な引き締め、または不明 原因を止めれば半永久的
コストと時間 安価だが、時間を無駄にするリスク 費用はかかるが、確実性が高い

関連記事:予防歯科の基本と重要性|虫歯・歯周病予防から健康寿命を延ばす習慣まで解説

2. 歯科医に相談する前の準備

「歯茎が気になります」という漠然とした相談よりも、具体的な準備をしてから受診することで、より精度の高い診断が得られます。歯科医師はあなたの日常の習慣を知ることはできません。あなたの主観的な気づきを言語化しておくことが、スムーズな治療計画の策定に繋がります。

自分の症状を客観的に観察する

受診前に以下のポイントを自分でチェックし、メモしておきましょう。

  • いつから気になり始めたか: 数ヶ月前からの急激な変化か、数年かけてゆっくり進行したのかで、原因(歯周病か、ブラッシング圧かなど)を絞り込めます。
  • 痛みやしみの有無: 冷たいものが特定の箇所だけに染みるのか、全体的に違和感があるのか。
  • 出血の頻度: 歯を磨くたびに出血するのか、疲れた時だけ腫れるのか。
  • 使用中の道具: 使っている歯ブラシの硬さ(かため・ふつう・やわらかめ)や、電動歯ブラシの使用有無を正確に伝えられるようにします。

これまでの歯科治療歴を振り返る

過去の治療が現在の歯茎の状態に影響していることが多々あります。

  • 矯正治療の経験: 矯正後に歯ぐきが下がることがあります。これは歯を支える骨の厚みと移動のバランスによるもので、重要な情報です。
  • 被せ物の時期: 古い被せ物の適合が悪くなり、その刺激で歯ぐきが逃げるように下がっているケースがあります。
  • 歯ぎしり・食いしばりの自覚: 朝起きた時に顎が疲れている、あるいは家族に指摘されたことがあるか。過度な力は歯肉退縮の大きな要因です。

持参すべき・伝えるべき情報チェックリスト

初診相談を成功させる3ステップ

  •  現状の自覚症状メモ: 「右上の犬歯が冷たい水でズキッとする」など具体的に書き出す。
  •  セルフケア用品の確認: 普段使っている歯磨き粉やフロスの種類をスマホで撮影しておく。
  •  理想のゴールの明確化: 「見た目を完全に治したい」のか「しみるのだけ止めたい」のかを整理する。

3. 症例写真の見方と注意点

歯科医院のホームページで公開されている症例写真は、治療の可能性を知る上で非常に参考になります。しかし、写真のマジックに惑わされてはいけません。「自分のケースにそのまま当てはまるわけではない」ことを念頭に置き、冷静な視点で比較することが大切です。

写真の「美しさ」よりも「条件」を見る

単にビフォーアフターが綺麗だからという理由だけで選ぶのではなく、以下の条件を確認しましょう。

  • 退縮のレベル(Millerの分類): 隣り合う歯の間の歯茎(乳頭部)が残っているケースは成功率が高いですが、そこまで消失している場合は難易度が跳ね上がります。自分の今の状態に近い症例を探しましょう。
  • 撮影環境の統一: ビフォーとアフターで、ライティングや角度が極端に変わっていないか。光の加減で歯茎が明るく見えるだけの写真は注意が必要です。
  • 長期的な経過の有無: 術後すぐの写真だけでなく、1年後、2年後の写真が掲載されている医院は、治療の持続性に自信がある証拠です。

「リスク」と「限界」が書かれているか

本当に誠実な医院は、成功例だけでなく、起こり得るリスクについても言及しています。

  • 喫煙の影響: 喫煙者の症例が掲載されているか、あるいは「禁煙が必要だった」といったエピソードが添えられているか。タバコは歯肉再生治療の最大の敵です。
  • 再手術の可能性: 1回の処置で100%戻らなかった場合の説明があるか。
  • 外科処置の侵襲: 移植元の場所(上顎の裏側など)が術後どのようになるかといった、患者さんが知るべき負担が明記されているかを確認しましょう。

症例写真を読み解くための比較表

チェックポイント 信頼できる写真 注意が必要な写真
色の再現性 歯茎の血管まで鮮明。 全体的に白飛びしており不自然。
周辺の状態 隣の歯の状態も隠さず写っている。 極端にアップすぎて全体像不明。
説明文 治療期間や総額費用が併記。 「驚きの結果!」等の煽り文句のみ。

4. 歯茎痩せは放置してはいけない

「ちょっと歯茎が下がっただけだから」「まだ痛くないし」と放置することは、非常に高い代償を払うことに繋がります。歯茎が下がるということは、その下にある歯を支える土台(歯槽骨)も同時に失われている可能性が高いからです。早期発見・早期対応が、抜歯という最悪の結末を回避するための唯一の手段です。

「根面う蝕(こんめんうしょく)」の脅威

歯ぐきが下がって露出した歯の根元は、エナメル質という硬いガードがありません。

  • 酸に弱い象牙質の露出: 象牙質はエナメル質よりも柔らかく、虫歯菌が出す酸に対して極めて脆弱です。通常の虫歯よりも進行が驚くほど早く、気づいた時には神経まで達していることが多々あります。
  • 治療の難しさ: 根元の虫歯は詰め物が外れやすく、再発を繰り返しやすい場所です。「削って詰める」が通用しにくい部位であることを知っておくべきです。
  • 知覚過敏の慢性化: 露出した根元は冷温刺激に敏感になります。毎日の食事が苦痛になり、栄養バランスを崩す原因にもなり得ます。

歯周病のドミノ倒しを止める

歯ぐきが下がることで、お口全体の衛生環境がドミノ倒しのように悪化していきます。

  • プラークが溜まりやすい構造: 下がった歯ぐきのキワや、露出した根の複雑な形状は、ブラッシングの難易度を劇的に上げます。そこに溜まったプラークがさらに炎症を呼び、歯ぐきをさらに下げさせるという「負のスパイラル」に陥ります。
  • 歯の移動と揺れ: 土台が薄くなることで、歯がグラグラし始めます。最初は小さな揺れでも、噛み合わせの負担が集中すると、ある日突然ポロッと抜けてしまうことさえあります。
  • 審美的なコンプレックス: 「老けて見える」「不潔に見えるかも」という不安から、思い切り笑えなくなる精神的なダメージも無視できません。

放置によるリスクの進行ステージ

歯肉退縮放置の末路

  •  ステージ1(初期): 時々の知覚過敏。見た目のわずかな変化。ケアの見直しで進行停止可能。
  •  ステージ2(中期): 慢性的知覚過敏。根元の虫歯発生。この段階で外科的処置が必要になる。
  •  ステージ3(末期): 歯の動揺。深い歯周ポケット。最終的に抜歯、あるいはインプラントも不可能なほど骨を消失。

関連ニュース:歯茎痩せの進行を止めるためにできる日常習慣

5. CTGを含む治療法の選択肢

現代の歯科医療では、下がってしまった歯ぐきを「物理的に増やす」ことが可能です。特にCTG(結合組織移植術)は、見た目の自然さと長期的な安定性において、最も信頼されている治療法の一つです。自分の身体の一部を利用することで、拒絶反応の少ない、本物の組織の厚みを取り戻します。

CTG(結合組織移植術)の仕組みと効果

CTGは、主にお口の天井部分(口蓋)から丈夫な「組織」だけを採取し、歯茎が下がった場所に埋め込む方法です。

  • 圧倒的な厚みの確保: 表面の皮膚だけでなく、内側の組織を移植するため、しっかりとした厚みが出ます。これにより、将来的に再び歯ぐきが下がるリスクを大幅に軽減できます。
  • 自然な仕上がり: 自分の組織を使うため、色が馴染みやすく、インプラント周囲の歯ぐきを整える際にも多用されます。
  • 痛みの管理: 上あごの裏側を薄く切るため、術後は数日間ヒリヒリとした痛みがありますが、専用の保護プレート(パック)を使用することで、日常生活に大きな支障はありません。

その他の再生治療:FGGとトンネリング法

症状や目的によって、CTG以外の選択肢が提案されることもあります。

  • FGG(遊離歯肉移植術): 上あごから表面の硬い粘膜ごと移植する方法。見た目よりも「歯茎の強度」を優先したい場合、例えば動かない硬い歯ぐきが全くなくなってしまった場合に有効です。
  • トンネリング法: 歯茎を切開せず、トンネル状の隙間を作ってそこから組織や人工膜を滑り込ませる最新の術式。傷口が小さく、術後の腫れが非常に少ないのがメリットです。
  • リグロス等の薬剤併用: 骨の欠損も伴う場合、歯周組織再生医薬品を併用して、土台の骨から再生を促すプランも検討されます。

代表的な歯ぐき再生治療の比較

治療法 目的 主な特長
CTG 歯茎のボリューム(厚み)アップ 審美性が高く、再発しにくい。
FGG 角化歯肉(硬い歯茎)の確保 強固な土台ができる。色は少し不自然。
トンネリング法 根面被覆(露出した根を隠す) 低侵襲で術後の回復が最も早い。

6. 保険適用の範囲について知る

歯ぐきの再生治療を検討する際、多くの方が直面するのが費用の壁です。結論からお伝えすると、見た目を改善するための歯肉移植術は、原則として保険適用外(自由診療)となります。しかし、すべてのケースが全額自己負担というわけではなく、その目的が「病気の治療」であれば保険が認められる範囲も存在します。

保険診療として認められるケース

日本の公的医療保険制度では、「審美(見た目)」を目的とした処置は対象外ですが、「機能の回復」を目的とした場合は以下の処置に保険が適用されることがあります。

  • 歯周外科手術(フラップ手術): 歯周病によって破壊された組織を掃除し、環境を整える手術。この過程で歯ぐきの位置を調整する場合などは保険の範囲内です。
  • 一部の歯周組織再生誘導手術: 歯周病で溶けた「骨」を再生させるための手術(リグロス等の薬剤を使用する場合など)は、特定の条件を満たせば保険適用となります。
  • 抜歯や急性炎症の処置: 歯ぐきが下がった原因が急性の歯周炎や外傷によるもので、その応急処置を行う場合は保険診療です。

「保険」と「自費」の境界線

「露出した歯の根元を綺麗に隠したい」「左右の歯茎のラインを揃えたい」といった、美しさや長期的な清掃性の向上を主目的とする場合は、自費診療となります。

  • 混合診療の禁止: 日本の医療制度では、一連の治療の中で保険と自費を混ぜることはできません。そのため、高度な移植技術(CTGなど)を用いる場合は、検査から手術、その後の管理までがすべて自費扱いとなるのが一般的です。
  • 精密さの追求: 保険診療は「最低限の機能回復」を目指すのに対し、自費診療は「再発防止」や「究極の美しさ」のために時間と高度な材料を惜しみなく投入できるという違いがあります。

保険診療と自費診療の範囲比較

治療の分類 主な目的 費用の目安(自己負担)
保険診療(歯周外科) 歯周病菌の除去、炎症の停止 数千円 〜 1万円程度(3割負担)
自費診療(歯肉移植/CTG) 露出した根面の被覆、歯ぐきの厚み確保 5万円 〜 15万円(1歯あたり)
自費診療(全体設計) 咬合再構築、審美的なガムライン調整 20万円 〜(症例による)

参考ページ:根管治療の費用はいくら?保険適用と自費診療の違いを徹底解説

7. 自費診療との違いとメリット

「なぜ高額な自費診療を選ぶ価値があるのか」という疑問に対し、最も大きな答えは「予後の安定性と満足度の高さ」です。特に歯ぐきの移植治療においては、使用できる器具の精度やかけられる時間が、術後の「組織の生着率」に直結します。

マイクロスコープを用いた超精密手術

自費診療では、歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を使用することが一般的です。

  • 肉眼を越える精度: 歯茎は非常に薄く、わずかな傷でも壊死してしまいます。顕微鏡で数十倍に拡大して縫合を行うことで、血管や組織を傷つけず、傷跡が全くわからないレベルの仕上がりを目指せます。
  • 低侵襲な処置: 拡大視野下では必要最小限の切開で済むため、術後の腫れや痛みも保険診療の外科処置に比べて格段に少なくなります。

最高品質の移植材料と薬剤

保険制度の枠組みを超えた、世界基準の材料を使用できる点もメリットです。

  • エムドゲインやリグロス: 組織の再生を強力に促す特殊なたんぱく質や成長因子を、制限なく最適な量で使用できます。
  • 特殊な縫合糸: 髪の毛よりも細い、細菌が付着しにくい高品質な糸を使用することで、術後の感染リスクを極限まで抑え、組織の治癒を邪魔しません。
  • 十分なカウンセリング時間: なぜ歯ぐきが下がったのか、どのようなリスクがあるのか、「一生持たせるための戦略」を立てるために、十分な対話の時間を確保できます。

自費診療を選ぶべき3つの理由

  •  長期的な歯の温存: 歯ぐきの厚みを物理的に増やすことで、将来的な抜歯リスクを最小化できる。
  •  審美性の追求: 天然歯のような自然な歯ぐきの膨らみと色合いを再現できる。
  •  快適な術後: 精密な処置により、痛みや腫れといった外科処置特有のダウンタイムを軽減できる。

次に読む:後悔しない歯科選びの決定版!自分に合ったクリニックを見つける10の秘訣

8. 口腔内撮影で見る変化の記録

歯ぐきの後退は、1日や2日で劇的に進むものではありません。それゆえに、自分自身で変化に気づくことが難しく、気づいた時には手遅れになっていることもあります。そこで重要になるのが、歯科医院での高精度な口腔内写真による記録です。

画像による「見える化」の効果

ただ鏡を見るだけではわからない、微細な変化を捉えることができます。

  • 基準点の把握: 初診時に規格性のある(毎回同じ角度の)写真を撮ることで、「去年の写真と比べて1mm下がっている」といった客観的な比較が可能になります。
  • ブラッシング圧の検証: 歯茎に傷がついている箇所や、歯ブラシが強く当たりすぎている箇所を写真で指摘してもらうことで、間違った習慣を即座に修正できます。
  • モチベーションの維持: 再生治療を受けた後、組織が徐々に成熟していく様子を写真で確認することは、患者さんにとって「治療を頑張ってよかった」という確かな手応えになります。

自分でスマホを使って記録するコツ

通院の間、自宅でも定期的に写真を撮っておくことは非常に有益です。

  • 照明を明るくする: 窓際や洗面所の明るい場所で撮影しましょう。
  • 口角をしっかり引く: 指やスプーンを使い、歯茎のキワ(根元)がしっかり映るように意識してください。
  • 同じ角度で撮る: 正面だけでなく、横からも撮っておくと、厚みの変化に気づきやすくなります。

口腔内記録のメリットまとめ

記録の方法 わかること 活用方法
定期的な歯科撮影 0.1mm単位の退縮や色の変化 専門家による進行抑制の判断材料
レントゲン・CT 歯ぐきの下の「骨」の状態 再生治療が適応かどうかの判定
自宅セルフ撮影 急な腫れや傷、出血の箇所 受診時にスマホを見せて状況を説明

9. 治療後のメンテナンス方法

歯肉再生治療やCTGが成功したとしても、そこがゴールではありません。むしろ、新しく手に入れた歯茎を守るための「第2のスタート」です。移植した組織が安定し、一生使い続けられるかどうかは、術後のケアにかかっています。「せっかく治した歯茎を二度と下げない」ための、具体的なメンテナンス法をマスターしましょう。

ブラッシング方法の完全な見直し

歯ぐきが下がった最大の原因が「磨きすぎ」であった場合、以前と同じ磨き方を続ければ必ず再発します。

  • フェザータッチの実践: 歯ブラシの毛先がわずかに曲がる程度の、非常に軽い力(100〜200g)で磨きます。歯科医院で「染め出し」を行い、力が入りすぎていないか定期的にチェックしましょう。
  • やわらかい歯ブラシの選択: 術後数ヶ月は、移植部位をいたわるために極細・極軟のブラシを使用します。
  • 歯間ケアの習慣化: 歯ブラシの毛先を無理に隙間に押し込むのではなく、フロスやサイズに合った歯間ブラシを使って、歯茎への物理的摩擦を最小限にすることが鉄則です。

生活習慣と咬合管理

物理的な摩擦以外にも、歯ぐきへのストレス要因を排除します。

  • ナイトガード(マウスピース)の使用: 歯茎が下がる一因となる「食いしばり」の力を分散させ、移植した組織へのダメージを防ぎます。
  • 禁煙の継続: タバコは毛細血管を収縮させ、再生した組織の栄養供給を絶ちます。治療の成功を維持するためには、生涯禁煙を強くおすすめします。

術後の良好な状態を保つチェックリスト

  •  定期検診の遵守: 3ヶ月に一度はプロのクリーニングを受け、バイオフィルムをリセットする。
  •  異常の早期発見: 移植部位の歯ぐきが赤くなったり、むず痒い感じがしたらすぐに相談する。
  • 全身の健康管理: 糖尿病などの全身疾患は歯周病を悪化させるため、健康的な食事と運動を心がける。

10. 信頼できる歯科医院の選び方

歯肉再生治療(CTG等)は、歯科治療の中でも非常に難易度が高い「歯周形成外科」という分野に属します。どこの歯医者さんでも同じ結果が得られるわけではありません。一生ものの歯茎を手に入れるためには、確かな技術と実績、そして誠実なカウンセリングを備えた医院を選ぶことが最も重要です。

専門性と設備のチェックポイント

以下の要素が揃っているかどうか、Webサイトや初診時に確認しましょう。

  • 歯周病学会・臨床歯周病学会の所属: これらの学会に所属し、認定医や専門医の資格を持つ医師は、歯肉の構造と外科処置に精通しています。
  • マイクロスコープの導入と活用: 拡大視野での治療を行っているか。肉眼だけの外科処置は精度に限界があります。
  • 豊富な症例提示: メリットだけでなく、「このようなケースは難しい」といった医学的な限界を正直に示している医院は信頼できます。

「原因除去」を重視しているか

いきなり手術を勧めるのではなく、まずは「なぜ下がったか」を徹底的に調べてくれる医院を選びましょう。

  • ブラッシング指導の徹底: 手術の前に、正しい磨き方ができるまで丁寧に指導してくれるか。これがない医院での手術は再発のリスクが高いです。
  • 噛み合わせの分析: 歯ぎしりや咬合の偏りを無視して歯ぐきだけを戻そうとしても、すぐにまた剥がれてしまいます。
判断基準 信頼できる医院の特徴
カウンセリング 治療期間、リスク、総額費用を明記した書面をくれる。
歯科衛生士の関わり 清掃習慣の改善に本気で取り組んでくれる担当制の衛生士がいる。
アフターサポート 手術後1年以上の経過を診るための定期検診システムが整っている。

正しい知識と適切な治療で、歯ぐきの後退という課題を乗り越える

歯ぐきの後退(歯肉退縮)は、放置すれば見た目だけでなく歯の寿命を縮める深刻な問題ですが、現代の歯科医療においては「根本から解決し、取り戻すこと」が十分に可能です。大切なのは、ネット上の安易なセルフケア情報に惑わされず、まずは専門医による正確な診断を受けることです。CTGをはじめとする高度な移植治療は、あなたの大切な天然歯を一生守るための強力な盾となります。

まずは、明日からでもできることとして、ご自身の歯ぐきを明るい場所で撮影し、以前の写真と見比べてみてください。もし1mmでも変化を感じるなら、迷わず予防歯科や歯周病の専門医に相談しましょう。今の違和感に正直に向き合い、正しいブラッシング習慣を身につけ、プロの力を借りることが、数十年後も変わらない笑顔で過ごすための、確かな一歩になります。

歯茎の後退に関するよくある質問

Q. 下がってしまった歯ぐきは、自力で元に戻せますか?

A. いいえ、物理的に失われた歯茎の高さをセルフケアで戻すことはできません。

マッサージなどは「これ以上下げない」ための予防にはなりますが、再生には至りません。元の位置に戻すには、歯科医院での移植術などの専門的な外科処置が必要です。

Q. 歯茎の移植(CTG)の手術は痛いですか?

A. 術中は麻酔が効いているため無痛ですが、術後に数日間ヒリヒリした痛みがあります。

特に移植元となる上あごの裏側が痛みやすいですが、処方される痛み止めでコントロール可能です。また、傷口を保護するプレートなどを使用することで負担を軽減できます。

Q. 歯ぐきが下がる最大の原因は何ですか?

A. 「強すぎるブラッシング」と「歯周病」、そして「過度な噛み合わせの力」が三大原因です。

特に日本人に多いのが、綺麗好きゆえの磨きすぎです。硬いブラシでゴシゴシ擦る習慣があると、歯茎は摩擦で逃げるように下がってしまいます。まずは力の入れ方を見直すことが先決です。

Q. 歯茎の移植治療は、保険が適用されますか?

A. 見た目の改善目的であれば、原則として自費診療(保険適用外)となります。

高度な技術と時間を要する専門的処置のため、多くの医院で自費扱いとなります。ただし、重度の歯周病治療の一環として行われる手術など、一部保険が適用される例外もあるため、担当医に確認しましょう。

次に読む:最善の歯科治療を選ぶためのセカンドオピニオン活用ガイド

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執筆者

丘の上歯科醫院 院長

平成16年:愛知学院大学(歯)卒業
IDA(国際デンタルアカデミー)インプラントコース会員
OSG(大山矯正歯科)矯正コース会員
YAGレーザー研究会会員

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