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歯科コラム

予防歯科と口臭対策

  • 予防歯科

この記事でわかること
生理的な口臭から病的な口臭まで、原因に応じた適切なセルフチェックと対策
舌苔(ぜったい)の正しい除去方法や、マウスウォッシュの科学的根拠に基づく活用法
歯磨きだけでは防ぎきれない、口内の細菌バランスを整える予防歯科の重要性

「自分の息、もしかして臭っているかも……」と、対面での会話や至近距離でのコミュニケーションに不安を感じたことはありませんか?口臭は、他人に指摘されにくいデリケートな問題である一方、自分ではなかなか気づくことが難しい厄介な悩みです。

口臭の原因は、食べ物のニオイといった一時的なものから、歯ぐきの病気、さらには舌の汚れまで多岐にわたります。しかし、その根本にあるのは、お口の中の細菌が作り出すガスです。

これから、口臭のメカニズムを解き明かし、プロの視点から効果的な予防法を詳しく解説します。毎日の歯磨きに何をプラスすれば、清々しい息を維持できるのか。そして、自分では見落としがちな盲点はどこにあるのか。一生、自信を持って笑顔で会話を楽しむための、確かなヒントをお届けします。

目次

1. 口臭の原因とその予防策とは?

2. 口臭の種類とチェック方法を解説

3. 歯磨きだけでは防げない口臭の原因

4. 舌苔が口臭に与える影響と除去方法

5. マウスウォッシュの効果的な使い方

6. 口臭予防に役立つ食べ物と飲み物

7. ドライマウスが口臭を悪化させる理由

8. 唾液を増やして口臭を防ぐ方法

9. 口臭と歯周病の関係を理解しよう

10. 予防歯科で口臭をコントロールする方法

1. 口臭の原因とその予防策とは?

口臭を根本から断つためには、まず「なぜ臭うのか」という科学的な理由を知る必要があります。お口の中には数百種類の細菌が住んでおり、その中の一部がタンパク質を分解するときに、揮発性硫黄化合物(VSC)というガスを発生させます。これが口臭の正体です。

細菌によるタンパク質分解のメカニズム

私たちの口内には、剥がれ落ちた粘膜や食べかすなどのタンパク質が常に存在します。

  • 悪玉菌の活動: 歯周病菌を代表とする嫌気性菌(空気を嫌う菌)が、これらのタンパク質を餌にして分解を行います。
  • ガスの発生: 分解の過程で、卵が腐ったようなニオイの「硫化水素」や、生ゴミのようなニオイの「メチルメルカプタン」が発生します。
  • 蓄積の影響: 唾液が減ったり、お口の掃除が不十分だったりすると、これらのガスが濃縮され、強いニオイとなって外に漏れ出します。

日常生活でできる基本的な予防策

原因が細菌にある以上、予防の基本は「細菌の数を減らすこと」「細菌の餌をなくすこと」に尽きます。

  • 徹底したプラークコントロール: 歯ブラシだけでなく、フロスや歯間ブラシを併用し、細菌の住処となるプラークを物理的に取り除きます。
  • 唾液の質と量を保つ: 唾液には自浄作用があるため、こまめに水分を摂り、よく噛んで食べることで唾液をしっかり出すことが大切です。
  • 生活習慣の改善: 喫煙は血管を収縮させ、細菌が繁殖しやすい乾燥状態を作るため、禁煙は非常に効果的な口臭対策になります。

口臭の主な原因物質と特徴

成分名 ニオイの例え 主な発生源
硫化水素 腐った卵 舌の汚れ(舌苔)
メチルメルカプタン 腐った玉ねぎ、生ゴミ 歯周病の進行
ジメチルサルファイド 腐ったキャベツ、磯の香り 全身疾患(肝臓・内臓など)

関連記事:歯科医院で行う口臭治療の第一歩は精密な検査から始まる

2. 口臭の種類とチェック方法を解説

口臭には、誰にでもある「生理的なもの」と、病気が原因の「深刻なもの」があります。まずは自分の口臭がどのタイプなのかを冷静に判断しましょう。また、自分では分かりにくいニオイを客観的に把握するチェック法も紹介します。

「生理的口臭」と「病的口臭」の違い

全ての口臭が異常というわけではありません。

  • 生理的口臭: 起床直後、空腹時、緊張時など、唾液が減ったときに誰にでも発生します。歯磨きや食事をすることで改善するのが特徴です。
  • 病的口臭: 歯周病、重度のむし歯、あるいは糖尿病などの全身疾患が原因で発生します。これらはセルフケアだけでは消えず、専門的な治療が必要です。
  • 外因的口臭: ニンニク、酒、タバコなどの嗜好品による一時的なものです。時間の経過とともに解消されます。

自宅でできる!簡単セルフチェック法

他人に聞けないときは、以下の方法で自分のニオイを確認してみましょう。

  • コップ・袋テスト: 綺麗なコップやビニール袋に息を吹き込み、一度封をしてから、一呼吸置いてから一気に嗅いでみます。
  • 手首なめテスト: 手首の内側を軽く舐め、乾燥した瞬間にニオイを嗅ぎます。これが「他人が感じているあなたのニオイ」に最も近いと言われています。
  • フロスチェック: 奥歯の隙間にフロスを通し、そのフロス自体のニオイを嗅いでみます。特定の場所だけ臭うなら、そこにむし歯や歯周病が隠れています。

口臭チェックの判定リスト

口臭の深刻度を確認する3つのサイン

  •  タイミング: 歯磨き直後でも「まだ臭う」と感じる場合は、病的口臭の可能性が高い。
  •  口腔内の異変: 鏡で見ると歯ぐきが赤く腫れている、または膿が出ている箇所がある。
  •  味覚の変化: 何も食べていないのに、口の中が常に苦い、または不快な味がする。

3. 歯磨きだけでは防げない口臭の原因

「朝晩しっかり歯を磨いているのに口臭が消えない」という方は、磨き方ではなく「磨いている場所」に問題があるかもしれません。お口の表面積のうち、歯が占める割合はわずか25%程度と言われています。残りの75%は粘膜や舌であり、そこを放置していては口臭は防げません。

歯と歯の隙間に残る「発酵した汚れ」

歯ブラシの毛先が届かない隙間は、口臭の大きな発生源です。

  • プラークの温床: 歯と歯の間の汚れは、時間が経つと細菌が発酵し、強烈なニオイを放つようになります。
  • 二次的な影響: 隙間の汚れを放置すると、歯周病が進行して歯周ポケットが深くなります。ポケットの深層部に潜む嫌気性菌は、最も質の悪いガスを排出します。
  • 詰め物の不適合: 過去に入れた被せ物が古くなり、できた段差に汚れが溜まっていることもあります。これは歯磨きでは絶対に取り除けません。

意外な盲点:喉の奥や唾液の質

口そのものだけでなく、構造上の問題も関与しています。

  • 膿栓(のうせん): 喉の扁桃にある小さな穴に、細菌や粘膜が固まった「臭い玉」ができることがあります。これが原因の場合、いくら歯を磨いてもニオイの元は断てません。
  • ドライマウス: ストレスや薬の副作用で唾液がネバネバになると、自浄作用が失われます。サラサラした唾液による「洗い流し」が行われないことが、ニオイの蓄積を招きます。

ケアの盲点と対策方法

見落としがちな部位 発生する問題 解決への第一歩
歯間部(歯と歯の間) プラークの発酵、歯周病の進行 デンタルフロスの毎日使用
舌の表面(舌苔) 口臭の最大原因(硫化水素の発生) 舌ブラシによる優しく適切な清掃
歯周ポケット 嫌気性菌による重度のガス発生 歯科医院での専門的なスケーリング

4. 舌苔が口臭に与える影響と除去方法

口臭の大きな原因(生理的なものの約6割以上)と言われているのが、舌の表面に付着した白い苔のような汚れ、「舌苔(ぜったい)」です。舌は非常にデリケートな組織であり、間違ったケアはかえってニオイを悪化させてしまいます。

舌苔がなぜ強烈に臭うのか

舌の表面は「舌乳頭(ぜつにゅうとう)」という細かい突起で覆われており、非常に複雑な構造をしています。

  • 細菌の隠れ家: 無数の突起の間に、細菌や剥がれ落ちた粘膜のカスが入り込み、絶好の繁殖場所となります。
  • 硫黄ガスの発生源: 舌苔の中に住む嫌気性菌が、タンパク質を分解して卵が腐ったような強い硫黄ガスを放出します。
  • 舌苔ができる原因: 体調不良、ストレス、口呼吸による乾燥、唾液分泌の減少などが重なると、舌苔は厚くなり、ニオイも強くなります。

正しい「舌クリーニング」の極意

舌を磨く際に最も重要なのは、「傷つけないこと」です。

  • 専用の舌ブラシを使う: 歯ブラシは毛先が硬すぎ、舌の粘膜を傷つけてしまいます。柔らかいラバータイプや極細毛の専用ブラシを選びましょう。
  • 奥から手前へ一方向に: ブラシを往復させると、汚れを喉の奥へ押し込んでしまいます。一方向へ優しく撫でるように動かしてください。
  • 回数は「1日1回」まで: やりすぎは禁物です。特に細菌の活動が活発になる起床時に行うのが最も効果的です。
  • 力を入れない: 舌の粘膜を傷つけると、そこから細菌が入り込み、かえってニオイの元となる汚れが溜まりやすくなります。

舌ケアのNG習慣リスト

舌の健康を守るための注意点

  •  歯ブラシでゴシゴシ磨く: 舌乳頭を傷つけ、味覚障害や慢性的口臭の引き金になる。
  •  1日に何度も掃除する: 必要な粘膜まで削ぎ落としてしまい、口内のバリア機能を低下させる。
  •  鏡を見ずに行う: ブラシの位置がズレて「おえっ」となる(嘔吐反射)原因になるため、しっかり確認しながら行う。

参考:クリーニングで口臭予防!口の中を清潔に保つためのポイント

5. マウスウォッシュの効果的な使い方

マウスウォッシュ(洗口液)は、手軽に口臭をリセットできる便利なアイテムですが、ただ適当にすすぐだけでは十分な効果は得られません。成分の特性を知り、「いつ使うか」という戦略を立てることで、その威力は格段に高まります。

「化粧品」と「医薬部外品」の選択

パッケージをよく見ると、マウスウォッシュには2つの区分があります。

  • 化粧品タイプ: 主に香料でニオイを上書き(マスキング)するものです。一時的なリフレッシュには良いですが、口臭の原因菌を殺す力はありません。
  • 医薬部外品タイプ: CPC(塩化セチルピリジニウム)やIPMP(イソプロピルメチルフェノール)などの殺菌成分が含まれています。ニオイの元となる細菌そのものに働きかけます。
  • ノンアルコール派かアルコール派か: 刺激に弱い方やドライマウス気味の方は、ノンアルコールタイプを選ばないと、刺激で口内が乾燥し、かえって口臭を招くことがあります。

効果を200%引き出す活用術

日常のルーティンに賢く組み込みましょう。

  • 就寝前がゴールデンタイム: 寝ている間は唾液が減り、細菌が爆発的に増えます。寝る直前に殺菌成分入りの洗口液を使うことで、朝の不快な「起床時口臭」を劇的に抑えることができます。
  • 「30秒間」しっかり行き渡らせる: 口に含んだら、すぐに吐き出さず、頬を膨らませて歯の隙間や喉の近くまで液を行き渡らせるように30秒はキープしましょう。
  • 使用後のゆすぎに注意: せっかくの有効成分が流れてしまうため、使用後に水で何度もゆすぐのは控えましょう。軽く1回吐き出す程度にするのが理想です。

マウスウォッシュの成分別活用ガイド

代表的な成分 期待できる効果 こんな時におすすめ
CPC(殺菌剤) 浮遊している細菌を殺菌 日中の気軽なエチケットに
IPMP(浸透殺菌剤) バイオフィルム内部まで浸透 就寝前の本格的な菌管理に
グルコン酸亜鉛 硫黄ガスを吸着・無臭化 今すぐニオイを消したい時に

6. 口臭予防に役立つ食べ物と飲み物

口臭対策は、磨くことと同じくらい「何を口にするか」が重要です。私たちが日常的に摂取する食品の中には、細菌の増殖を抑えたり、ニオイの元となる物質を化学的に中和したりする強力な味方が存在します。食事の選び方一つで、口内の清涼感は大きく変わります。

消臭効果の高い「カテキン」と「ポリフェノール」

特定の成分を含む飲み物や食べ物は、発生してしまったガスを直接叩く効果があります。

  • 緑茶(カテキン): 緑茶に含まれるカテキンには強い殺菌作用と消臭作用があります。食事中や食後に緑茶を飲むことで、細菌の活動を抑えつつ、ニオイの成分を中和します。
  • リンゴ(ポリフェノール・リンゴ酸): リンゴに含まれる成分は、ニンニク料理の後の強いニオイ(アリシン)を分解する力が非常に高いです。皮ごと食べることで、より高い効果が期待できます。
  • パセリ(クロロフィル): 葉緑素であるクロロフィルには強力な殺菌・脱臭効果があります。付け合わせのパセリをしっかり噛んで食べることは、理にかなった口臭対策です。

唾液の分泌を促す「自浄性食品」

噛むことそのものが口臭を消すアクションになります。

  • 食物繊維の多い野菜: ゴボウやセロリ、生野菜などの食物繊維が豊富な食材は、噛む回数が増えるため唾液が大量に分泌されます。また、噛む過程で歯の表面を物理的に掃除する効果もあります。
  • 酸味のある食品: レモンや梅干しなどの酸味は、唾液腺を強く刺激します。唾液が増えることで口内の細菌が洗い流され、ニオイの発生を未然に防ぎます。

口臭対策に役立つ飲食物まとめ

食品・飲料 主な有効成分 具体的な効果
緑茶 カテキン 細菌の殺菌、硫黄ガスの無臭化
リンゴ リンゴポリフェノール ニンニク臭などの分解・消臭
梅干し・レモン クエン酸 強力な唾液分泌促進、口内の自浄

関連記事:虫歯の予防に役立つ食品と飲み物

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7. ドライマウスが口臭を悪化させる理由

「最近、口の中が乾燥して話しにくい」「朝起きると口がカラカラになっている」という状態は、口臭が最も発生しやすい危険なコンディションです。唾液は、お口を潤すだけでなく、細菌の増殖を抑える「天然のバリア機能」を担っています。このバリアが失われることが、口臭悪化の最短距離となってしまいます。

唾液が減ると細菌は「爆発的」に増える

ドライマウスの状態では、口内の自浄作用がストップしてしまいます。

  • 抗菌作用の消失: 唾液に含まれるリゾチームやラクトフェリンといった抗菌物質が届かなくなり、細菌が自由に繁殖できるようになります。
  • 汚れの蓄積: 本来なら唾液で洗い流されるはずの食べかすや粘膜の死骸が停滞し、細菌の餌(タンパク質)が豊富になってしまいます。
  • 酸素の欠乏: 口が乾くと、酸素を嫌う「嫌気性菌(歯周病菌)」が活発になります。これらは最も強力な悪臭ガスを出す菌群です。

ドライマウスを引き起こす意外な要因

口の渇きは、単なる水分不足だけではありません。

  • 口呼吸の習慣: 鼻ではなく口で息をすると、空気の流れで唾液が蒸発し、一気に口内が乾燥します。特に睡眠中の口呼吸は起床時の強烈な口臭に直結します。
  • ストレスと交感神経: 緊張やストレスを感じると、唾液の分泌が抑えられ、粘つきの強い「ネバネバ唾液」に変わります。
  • 薬剤の副作用: 花粉症の薬、降圧剤、抗うつ剤などの副作用として、口の渇きが生じることが多々あります。

ドライマウス改善のチェックリスト

  •  鼻呼吸への意識: 意識的に口を閉じ、鼻でゆっくり呼吸する習慣をつける。
  •  こまめな水分補給: 一度にたくさん飲むのではなく、少量の水で口を湿らせる回数を増やす。
  •  夜間の加湿: 寝室の湿度を保ち、必要であれば就寝用のマウステープを使用して口閉じを促す。

関連文献:高齢者に多い口腔機能低下症とは?知っておきたい原因と対策

8. 唾液を増やして口臭を防ぐ方法

ドライマウスのリスクを理解した後は、いかにして唾液の「質」と「量」を高めるかを考えましょう。唾液は自分で増やすことができます。唾液腺を直接刺激するマッサージや機能訓練は、即効性があり、口臭予防の強力な武器になります。

唾液腺マッサージの実践

お口の周りにある「3大唾液腺」を刺激しましょう。

  • 耳下腺(じかせん): 耳の前の頬の部分に指を当て、後ろから前へ円を描くようにマッサージします。サラサラした唾液が出やすくなります。
  • 顎下腺(がっかせん): 顎の骨の内側の柔らかい部分を、耳の下から顎の先まで順番に押していきます。
  • 舌下腺(ぜっかせん): 顎の先端の真下、舌の付け根あたりを、親指で上に向かってゆっくり突き上げるように押します。

舌の運動「あいうべ体操」

口周りの筋肉を鍛えることで、唾液分泌と鼻呼吸の両方を促進できます。

  • 「あー」: 口を大きく、縦に広げます。
  • 「いー」: 口を左右に、思い切り横に広げます。
  • 「うー」: 唇をすぼめて、前へ強く突き出します。
  • 「べー」: 舌を思い切り下に伸ばしきります。
  • ポイント: 1回5秒程度かけて、大げさすぎるくらいに動かすのがコツです。これを1日30回程度繰り返します。

唾液分泌を促進する生活習慣まとめ

習慣の種類 具体的なアクション 期待できるメリット
咀嚼の改善 一口30回以上噛む、ガムを噛む 物理的な刺激による持続的な唾液分泌
味覚刺激 酸っぱいものを想像する、食べる 反射的な唾液放出、口内の酸中和
保湿ケア 保湿ジェルやスプレーの活用 夜間などの乾燥による細菌繁殖の抑制

9. 口臭と歯周病の関係を理解しよう

「病的口臭」の実に80%以上が歯周病に起因していると言われています。歯周病による口臭は、単なる磨き残しとは比較にならないほど強烈で、「生ゴミのようなニオイ」と形容されることが多いのが特徴です。このニオイを消すには、表面的なケアではなく、歯ぐきの奥底に潜む細菌の除去が不可欠です。

「メチルメルカプタン」が放つ異臭

歯周病菌が作り出すガスは、周囲に不快感を与えるだけでなく、組織を破壊する毒性も持っています。

  • 歯周ポケットという培養地: 歯ぐきが腫れてできる深い溝(歯周ポケット)は酸素が届かず、悪臭を放つ菌にとって最高の環境です。
  • 血液と細菌の反応: 歯周病により歯ぐきから出血すると、その血液中のタンパク質を細菌が分解し、さらに強烈な「腐敗臭」を発生させます。
  • 他人が気づくレベル: このタイプの口臭は、数メートル離れていても伝わることがあります。自分では麻痺して気づけないことが多いため、最も注意が必要です。

歯周病由来の口臭を断つステップ

歯周病が原因である以上、治療=口臭対策となります。

  • 歯周病検査を受ける: まずは自分のポケットの深さを計測しましょう。4mm以上のポケットがある場合、セルフケアではニオイの元は取れません。
  • 歯石除去(スケーリング): 菌の温床となっている歯石を取り除き、歯の表面をツルツルにすることで細菌の定着を防ぎます。
  • 炎症のコントロール: 歯科医院での処置と自宅でのフロスを組み合わせ、出血を止めることで、ガスの材料となるタンパク質の供給を断ちます。

歯周病口臭の警戒サイン

  •  朝のネバネバ: 起床時に口の中が糸を引くようにネバつき、強い不快感がある。
  •  フロスの異臭: 歯間に通したフロスを嗅ぐと、鼻を突くような生臭いニオイがする。
  •  歯ぐきの色: 鏡で見ると、歯ぐきの縁が赤紫色に変色し、ぶよぶよと腫れている。

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10. 予防歯科で口臭をコントロールする方法

口臭対策の最終的なゴールは、ニオイが出てから消すのではなく、「ニオイが出ない口内環境」をキープすることです。そのためには、予防歯科というアプローチが最も効率的で確実です。プロの手による定期的なリセットは、精神的な安心感にも繋がります。

自分では届かない「菌の溜まり場」をリセット

歯科医院でのクリーニングには、セルフケアでは絶対に不可能な効果があります。

  • バイオフィルムの破壊: 細菌が作った強固なバリア(バイオフィルム)は、専門の器具による物理的な洗浄でしか完全に剥がせません。
  • 舌深部のケア: 自分では嘔吐反射(おえっとなる)で磨きにくい舌の奥の方も、プロなら安全に清掃可能です。
  • むし歯や被せ物のチェック: 汚れが溜まりやすい「古い被せ物の隙間」を修復することで、ニオイの発生源そのものをなくします。

口臭外来・精密診断の活用

どうしても不安が消えない場合は、科学的な数値を指標にしましょう。

  • 口臭測定器(オーラクロマなど): 息に含まれるガスの種類と濃度をミリ単位で測定します。「どの菌が原因か」が数値で分かるため、無駄のない対策が可能になります。
  • 唾液検査: 唾液の量、質、細菌の数を調べることで、あなたの口臭リスクを多角的に分析します。
  • 自信の回復: 検査で「数値が正常範囲内である」と確認できることは、自臭症(実際は臭わないのに臭うと思い込む)の不安を解消する大きな助けになります。
予防歯科の活用 具体的なメリット 通院頻度の目安
定期クリーニング 口内の菌を一度ゼロに近くリセットし、清潔を保つ。 3ヶ月に1回
口臭測定・精密検査 ガスの種類を特定し、科学的な根拠で不安を消す。 半年に1回
ブラッシング指導 自分専用の磨き残し対策をマスターし、セルフケアの質を上げる。 1年に1〜2回

正しい知識とプロのケアで、自信に満ちた息を取り戻す

口臭対策で最も大切なことは、一時的な消臭に頼るのではなく、お口の中の細菌バランスを整えるという根本的な視点を持つことです。「舌苔のケア」「唾液の確保」「歯周病の治療」という3つの柱を軸に、日々のセルフケアと定期的な予防歯科を組み合わせることで、口臭の不安は確実に解消できます。

まずは、明日から「起床後すぐの舌ケア」と「一口30回の咀嚼」を実践してみてください。そして、もし自分では解決できない不安があるなら、迷わず歯科医院のドアを叩きましょう。科学的な診断とプロのクリーニングは、あなたに清潔な息だけでなく、誰かと心置きなく会話できる「心の余裕」という大きな財産を与えてくれます。

予防歯科と口臭対策に関するよくある質問

Q. 歯を磨いた直後なのに、すぐに口臭が気になります。なぜですか?

A. 舌の汚れや、歯周ポケット内部の細菌が残っている可能性が高いです。

歯磨きで掃除できるのはお口の表面積の25%だけです。舌苔の除去や、歯間ブラシによる隙間の掃除、あるいは歯科医院での深いポケットの洗浄が必要です。

Q. 舌ブラシがありません。普通の歯ブラシで舌を磨いても良いですか?

A. おすすめしません。歯ブラシは硬すぎて舌の粘膜を傷つける恐れがあります。

舌の表面にある「味蕾」を傷つけると味覚障害や、傷口からの細菌繁殖による悪臭の原因になります。必ず専用の柔らかい舌ブラシを使用してください。

Q. マウスウォッシュを使えば歯磨きをしなくても口臭は防げますか?

A. 防げません。マウスウォッシュはあくまで一時的な補助です。

口臭の元となるプラークは強固な膜を作っており、水ですすぐだけでは剥がれません。物理的なブラッシングで汚れを落とした後に使用することで、初めて効果を発揮します。

Q. 胃が悪いと口臭がすると聞きましたが、本当ですか?

A. まれにありますが、口臭の90%以上はお口の中に原因があります。

逆流性食道炎などは別として、一般的な口臭は口腔内の細菌によるものです。まずは歯科医院で徹底的なお口のケアを行い、それでも改善しない場合に内科的な要因を検討するのが順序です。

参考:初めての歯科クリーニング体験!痛みはある?気になる流れを解説

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執筆者

丘の上歯科醫院 院長

平成16年:愛知学院大学(歯)卒業
IDA(国際デンタルアカデミー)インプラントコース会員
OSG(大山矯正歯科)矯正コース会員
YAGレーザー研究会会員

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